by Gartner
ウイリアム・クラーク リサーチVP
田崎 堅志 リサーチVP

 ガートナーでは2013年までに、世界の上位2000社に入る大企業の40%が「コンテキスト(文脈)アウェア・コンピューティング」に取り組むようになると予測する。コンテキスト・アウェア・コンピューティングは、ユーザーの状況や興味といったコンテキストを自動的に感知/推理し、コンテキストに応じたコンテンツやサービスを提供する。

 Web検索やモバイル広告、ソーシャルプラットフォームの連携が密になるにつれ、エンドユーザーに単なるコンテンツやアプリケーションを提供するのではなく、コンテキストを理解した“ユーザー体験”を提供することが、企業にとってより重要になった。特に消費者向けモバイルサービス分野におけるコンテキストは、Webにおける検索並みに重要になった。検索できないWebが誰にも読まれないように、コンテキストが理解できないモバイルサービスは誰にも見向きされなくなる。

 コンテキストを理解することで、ユニークで説得力のあるユーザー体験を顧客に提供可能になり、新規やリピートのビジネス案件を獲得できるようになるだろう。また社内では、特定領域のビジネスプロセスを従来より確実に改善したり、ナレッジワーカーの生産性を向上させたりできるはずだ。

 一般の企業が、コンテキスト・アウェア・コンピューティングを理解し、自分たちのサービスに取り入れられるようになるまでには、3年から7年といった時間がかかるだろう。ガートナーはCIO(最高情報責任者)に対して、今後5年間は以下の六つのポイントに留意してプロジェクトを推進すべきであると指摘している。

(1)状況を見極める
 コンテキストは企業にとって非常に新しいアイデアであり、利用部門や経営者は理解できない可能性がある。まずは他社や市場の動向を注意深く観察し、情報収集を進めよう。

(2)協力してくれる利用部門を見つける
 コンテキスト・アウェア・コンピューティングは、金融や通信、小売り、旅行、病院といった分野で、顧客が直接利用するWebサイトからまず導入が始まるだろう。スマートフォンやATM(現金自動預け払い機)、POS端末、自動車、自動販売機、家庭などで導入が進むとみられる。

(3)ユーザー体験デザインの重要性を理解する
 2010年内に、顧客や従業員に提供するユーザー体験(使い勝手)を設計する専門組織を立ち上げるべきだ。コンテキストは、ユーザー体験を一変させ、ユーザー体験が企業にとってのコアコンピタンスになる。

(4)大規模導入は2015年以降
 コンテキストに対する理解が深まり、大規模プロジェクトで導入されるようになるのは、2015年以降になるだろう。

(5)パートナーを見極める
 Bto C(消費者向け)のシステムでコンテキストを導入するためには、端末メーカーや通信事業者、検索サービス事業者、ソーシャルアプリケーション事業者などとの連携が必要だ。BtoB(企業向け)システムの場合も、どんなベンダーにシステム構築を依頼するかが成功の決め手となる。

(6)組織やプロジェクト間の連携を円滑にする
 コンテキスト・アウェア・コンピューティングは、様々なプロジェクト間で連携して初めて実現する。そのための社内調整を始めるべきだ。