11月の冷めた空気の中,僕は恋人から奇妙なメールを一通受け取った。メールには,次のようにだけ書かれていた。

23.1 11.1 18.5 13.1 19.8.15 21

 六つの数字の羅列が何を意味するのか。僕にはわからなかったが,何かしら嫌な胸騒ぎを覚えた。

 確かに彼女は時々こういうことをするタイプだ。それにしても今回のメールは,今までとは何かが違う気がした。僕は,ほとんど反射的に彼女に電話を掛けた。しかし,彼女は出ない。何度か掛け直してみたが,「電波の届かないところにいるか,または,電源が入っていない」ままだ。

 僕の胸騒ぎがさらに大きくなる。たった今,意味不明なメールを出した人間が,全く電話に出られないことってあるのだろうか?

 考えられるのは,(1)急に携帯電話に出られなくなった,(2)ただのイタズラ,(3)その他の理由,ぐらいだろう。(1)は少し考えにくい。彼女は何をおいても,電話に出ないと気が済まないタイプだからだ。(2)のイタズラという可能性もあるが,今までなら僕が電話すれば「解けたの?」と無邪気に笑って済ませていた。彼女は,僕とのやり取りを楽しむタイプであって,決して電話を無視して喜ぶタイプではない。

 すると(3)だけが残る。一体どんな理由があるのだろうか。それについて考えたいが,思考に集中できない。僕自身,無意識に答えを出すのを遠ざけようとしている。まるで秋風を避ける枯葉のように。

 「早くしろ!とんでもないことになるぞ」。僕の中の何かが警鐘を鳴らす。気付くと僕は,大学以来の友人であるKに電話していた。

僕:「ねぇ,このメールは一体何だろう」
K :「さぁ,オレにもよくわからないな」
僕:「とても嫌な予感がする。まるで丸々としたアシカがナイフとフォークを持った白熊に出会ってしまったかのようにね。僕は少し狼狽気味だ」
K :「わかるよ。だけど,落ち着いて考えたほうがいい。そもそも,このメールは何のパズルだろう」
僕:「パズル?」
K :「これはたぶんパズルだろう。であれば,今君にできることは,それを解くことだ」
僕:「そうだね,がんばってみるよ。ありがとう」

 友人Kの言う通り,冷静にこれは何なのかを考えるべきだ。まずは冷静さを取り戻すために,一番好きなことについて考えてみよう。それはRuby以外にあり得ない。特に,Rubyのクラスや変数について思いをめぐらせれば,きっと落ち着けるはずだ。