●ERPパッケージを導入している企業のチェックポイント
●ERPパッケージを導入している企業のチェックポイント

 「ERP(統合基幹業務)パッケージを導入していれば、ベンダーが制度改正に対応するのでIFRS対応には大きな手間がかからないはずだ」─。

 この考えは、正しいのだろうか。デロイトトーマツコンサルティングの中村シニアマネジャーは「ERPパッケージを導入していても、情報システムの IFRS対応は万全ではない」と指摘する。「実際はERPパッケージを導入している範囲が業務の一部にすぎなかったり、独自仕様のアドオン(追加開発)ソフトをERPパッケージに追加していたりと、本来の機能をそのまま利用していない企業が多い」(同)からだ。

 ERPパッケージがIFRSの会計処理を実現できたとしても、利用する側で機能を生かさなければ、IFRSには対応できない。長期間にわたってバージョンアップをしていない企業も注意が必要だ。IFRSは改定が頻繁に行われるため、最新のバージョンに更新していく必要がある。

 見過ごされがちなのが、子会社でどんな会計システムを利用しているかだ。本社がERPパッケージを導入していても、子会社の会計システムはばらばらなことが多い。

 中村シニアマネジャーは「既にプロジェクトに着手した企業の中で、子会社のシステムの調査に手間取るケースが出てきている」と指摘する。なるべく早い段階で子会社のシステムの状況を確認しておくことが望ましい。

 既にIFRSが適用になっているドイツに本社を置くSAPや、グローバル企業で利用されている米オラクルのERPパッケージの場合、IFRSが求める会計処理を実現する機能は備えているとの見解を両社は示している。両社以外の外資系ベンダーのERPパッケージでも、欧州をはじめとしてIFRSが適用になった国での導入実績があれば必要な機能を持っているケースが多い。

ベンダーにIFRS対応計画の確認を

 国産ERPパッケージを利用している企業は、開発ベンダーにIFRS対応計画を確認することが必要だ。日本のERPベンダーも、IFRSの強制適用に向けて製品のロードマップを発表し始めた。エス・エス・ジェイ(SSJ)のERPパッケージ「スーパーストリーム(SuperStream)」の場合、 2012年以降に強制適用時に必要な会計処理の機能を持つ製品を出荷する計画だ。

 SSJ以外ではクレオや住商情報システム、ワークスアプリケーションズなども製品ロードマップを発表した。しかしベンダーの計画が不透明な場合は、システムをリプレースせざるを得ないケースが出てくるかもしれない。

導入範囲や使い方次第では、見直しが必要です。