1. 整ったドキュメントがない移行元システムの仕様を,図解で効率的に聞き出す
2. 工数増と工期短縮への対応で増やした開発要員に向け勉強会などを開催
3. メモリー不足によるクライアントの速度低下には実装方法の変更で対応

 「工数が大幅に増えるにもかかわらず,開発期間を短縮するなんて,どう考えたってむちゃだ。この話,どうかうそであってくれ」──。

 商品先物取引業務システムをASPサービスとして商品先物取引会社に提供するオーテックで,システム再構築プロジェクトを実質的に率いていた古谷智史氏(システム部マネージャー)と今井大輔氏(同)は,ようやく基本設計のメドが立ったところで,外部連携先システムが様変わりすることを知り,がく然となった。

柔軟性と拡張性,性能に問題発生

 オーテックは,十数社の商品先物取引会社に対して,法定帳簿や顧客情報の管理,受発注処理といったシステム・サービスを提供している。会社設立の1998年から10年以上にわたって,大型汎用機上に構築したシステムを使ってサービスを提供してきた。

図1●商品先物取引業務システムを再構築した背景
図1●商品先物取引業務システムを再構築した背景
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 しかし,4年ほど前から柔軟性や拡張性が低い,保守や運用コストが高い,性能が不足するなどの問題が目立つようになった。また,ユーザーである商品先物取引会社によって,商品先物の取引単位などは異なる。そこで,システムを個別の要望に合わせ,カスタマイズする必要があるのだが,そのための対応コストが大きく膨らみ,同業他社に対して優位性を保てなくなる恐れがあった。

 そこで,機能や性能の拡張性を備え,オープンソースのミドルウエアも活用した費用対効果の高いシステムをPCサーバー上に構築。それを外部のデータセンターに置くことで,諸問題を解決することにした(図1)。リッチクライアント技術を利用した操作性向上,商品先物取引時間の延長を見込んだ24時間取引対応など,機能面の大幅な強化も図る。