いよいよ夏休み。海や山、観光地など、自宅を離れて遠くに旅行に出かける予定の人も多いだろう。読者の皆さんは、そんな旅先でのインターネット接続をこれまでどうしていただろうか。「旅行に来てまでネットを見たくない」という人もいるかもしれないが、「できれば出先でも普段と同じようにネットが使いたい」と思いながら、いい手段がなく断念してきた人も多かったはず。だが、今年は違う。そんな人にとって心強い「モバイルルーター」と呼ばれる製品が一気に充実してきたからだ。この夏は、モバイルルーターを片手に、いろいろな場所でネットを楽しんでいただきたい。

 モバイルルーターとは、インターネットとの接続に第3世代携帯電話やWiMAXなど通信事業者のネットワークを使い、そのインターネット接続をIEEE802.11の無線LANで利用させるルーターのこと。小型・軽量で、内蔵バッテリーを使いながら何時間も動作させられるため、手軽にバックやポケットに入れて持ち運べるのが特徴である。このモバイルルーターを持ち歩けば、携帯電話などの電波が入るところならどこにいても、無線LAN機能を持つ機器からインターネットが利用できる。

 モバイルルーターのもう一つの特徴は、無線LANを使って複数の機器を同時に接続可能なこと。たとえば、友達同士で旅行に行くときに、だれか一人がモバイルルーターを持っていれば、皆がそれぞれに持ってきたパソコンやiPad/iPod touch、ゲーム機など、WiFi通信機能の搭載機器からネットに接続できるようになる。これまでのように、各パソコンや端末ごとに接続機器を用意する必要がなくなり、圧倒的に簡単かつ便利になる。もちろん、うまく活用すれば通信費も大幅に節約できる。

まずはモバイルルーターの現状を知ろう

、モバイルルーター市場の先陣を切ったのは、イー・モバイルが2009年11月に発売した「Pocket WiFi」。その後、今年に入ってからa2networkなどが販売する「MiFi 2372」、日本通信の「b-mobile WiFi」、NTT東日本の「光ポータブル」、バッファローの「ポータブルWi-Fi」、シンセイコーポレーションの「URoad-7000」、ソフトアンドハードの「Egg iWWR-1000J」など、幅広い製品が登場している。モバイルルーター製品によって、利用できる通信事業者や、バッテリーの持続時間などに差があるため、よく調べてから自分に合うものを購入したいところだ。

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機器と通信回線の双方で価格競争が進む

 いろいろなモバイルルーターが一気に登場したことで、価格についてもすでに競争が始まっている。回線の契約付きで購入すると、高くても数千円、場合によっては1円や0円といった価格で、これらのモバイルルーターがすでに入手できる状況にある。

 端末だけでなく、通信回線についてもMVNO(仮想移動体通信事業者)を中心にSIM(Subscriber Identity Module)カードと呼ばれる電話番号やネットワークの情報が入っているICチップだけを提供するところが増えてきた。これらのSIMを対応しているモバイルルーターに挿せば、その事業者のネットワークに切り替えて通信できるようになる。こうした状況を受けて、事業者間でも通信価格の競争が始まっている。

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国内だけでなく海外旅行でも利用可能

 モバイルルーターが使えるのは、必ずしも国内ばかりではない。海外では、いわゆる「SIMフリー」として、その国の通信事業者のSIMカードを挿して格安に通信できるようになっているモバイルルーターも多い。また、最近では海外旅行の際に一時的にモバイルルーターを貸し出してくれるサービスや、日本で使っているモバイルルーターをそのまま海外でも定額で使えるサービスも発表されている。

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