準グランプリ

 準グランプリを受賞した花王の「ERPを使ったグローバル一体運営基盤」は、全世界のグループ会社が利用する基幹業務システム。日本だけでなく、アジア、欧州、米国のグループ会社が一つの標準システムを使って、販売、物流、会計など主要業務を遂行する。

 「国内で培った業務ノウハウを世界に素早く展開するため、グローバルでシステムを統一した」。花王の大路延憲 情報システム部門理事統括はシステム導入の狙いをこう語る。「今後、海外で生み出されるだろう工夫を日本で利用するためにも、世界中のシステムを標準化する必要があった」と続ける。

 とはいえ法制度や商習慣の異なる各国のグループ会社に同じシステムを導入するのは簡単ではない。花王は10年の歳月をかけて、この課題を克服した。最終的にプロジェクトに参加したメンバーは、25カ国以上、約1500人に上った。

 プロジェクトは2000年にスタートした。まずグループ各社の業務を標準化した。販売、生産、購買、会計といった業務ごとに標準の業務プロセスと業務ルールを決めた。KPI(重要業績評価指標)やコード体系も統一し、すべてのグループ会社が同じやり方でビジネスを遂行するようにした。

 この業務標準を支えるシステムを開発し、2002年以降、世界各国のグループ会社に展開していった。アジアを皮切りに欧米のグル ープ会社に順次システムを導入した。1社当たり5~6カ月というハイペースで作業を進め、2009年4月にはついに日本の本社も標準システムに切り替えた。

図1●花王が構築したグローバル共通の新基幹系システムの概要
図1●花王が構築したグローバル共通の新基幹系システムの概要
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 標準システムはSAP製のERP(統合基幹業務システム)パッケージと自社開発システムのハイブリッド構成とした。実績データを入力・管理するシステムは、「独自性は必要ない」(大路統括)と判断してERPで構築。一方、実績データを統計処理して計画を立案するシステムは「各国で蓄積した業務ノウハウが詰まっているので、独自に作るべき」と考えた(図1)。

 稼働済みの標準システムは日本で集中管理し、国によってバラツキが出ないようにしている。日本のシステム部門の承認なしでは、アプリケーションやマスターデータをいっさい追加・変更できないとのルールを決めた。サーバーは日本のデータセンターに設置し、各国のグループ会社にはパソコンしか置かない。

システム名:ERP を使ったグローバル一体運営基盤
稼働時期:2009年4月
協力ベンダー:アビームコンサルティング、SAPジャパン、日本ヒューレット・パッカード、NTTコミュニケーションズ