準グランプリ

 自動車部品メーカーの小島プレス工業は「異業種でも利用可能なSaaS型共通EDI基盤」で準グランプリを受賞した。他社の利用を想定したSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型としてシステムを構築した点が評価された(図1)。ここでいう「他社」には、自動車部品業界だけでなく、異業種の企業や、自前のEDI(電子データ交換)システムを所有していない中小企業も含む。

 「他社にも使いやすいEDIを提供して日本のITの底上げに貢献したい」。小島プレス工業の兼子邦彦 技術企画部参事がこう語る通り、同社は営利目的でシステムを構築したのではない。経済産業省中小企業庁の委託事業の認定を受けたこともあり、ソフトウエアは無償で提供する。利用企業の負担はデータセンターの使用料だけなので、「これまで紙の伝票を使っていた中小企業でも気軽に導入できる」と兼子参事はみる。

図1●小島プレス工業の構築した「共通EDI基盤」の概要
図1●小島プレス工業の構築した「共通EDI基盤」の概要
自動車部品業界以外でも利用できるよう、業種別のモジュール構造にした
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 異業種でも利用できるよう、EDI基盤はモジュール構造で構築した。全業種で共通するモジュール(OS、ミドルウエア、ネットワーク管理など)と、それ以外の業種特有の要件を実現するモジュールを明確に分けた。特定業種向けの機能を実装するときは専用のモジュールを追加する。例えば、トヨタ自動車と取引がある自動車部品業向けには、「かんばんモジュール」を用意している。

 開発手法として、システム全体の要件を決めてから開発を始める「ウォーターフォール型」ではなく、「アジャイル型」を採用したことも目を引く。アジャイル型は2週間から1カ月の短い期間で、動くシステムを繰り返し開発して全体を完成させる手法のこと。小島プレス工業は「異なる業種の企業がEDIに求める要件を最初から完全に把握するのは難しい」(兼子参事)と考えて、アジャイル型での開発を決めた。

 「日本のITの底上げ」以外に、小島プレス工業はシステムが排出する二酸化炭素(CO2)の削減を目指した。共通EDI基盤をSaaS型で提供すれば、利用企業は独自のサーバーを持つ必要がなくなり、CO2排出量を減らせる。小島プレス工業は中小企業で年間2.43トン、小規模企業でも同0.97トンのCO2排出量削減につながると試算する。

 共通EDI基盤は現在、小島プレス工業のグループ会社3社と、その取引先30社ほどが利用している。2010年10月には外部のデータセンターにシステムを設置し、グループ外へのシステム提供を本格的に始める予定だ。

システム名:異業種でも利用可能なSaaS型共通EDI基盤
稼働時期:2009年7月
協力ベンダー:情報システム総研、グローバルワイズ、IT コーディネータ協会