「情報システムを構築・活用して顕著な成果を上げている企業を発掘し、成功のノウハウを広く共有する」。こうした目的で創設されたIT Japan Awardも今回で4回目を迎えた。

 今回のグランプリに輝いたのは、東京証券取引所。前回に続いて金融分野からの受賞となった(図1)。

図1●IT Japan Award 歴代の受賞企業
図1●IT Japan Award 歴代の受賞企業

「ビジネスを変えた」

 グランプリの対象である「新株式売買システム『arrowhead』」のポイントは、既存システムに比べて処理能力が大幅に向上したことだ。例えば、これまで2~3秒かかっていた注文応答時間を、1000分の1の2ミリ秒に短縮した。まさに「新時代を切り拓くIT活用事例」と言える。

 スピードアップにより、取引参加者がコンピュータを使って自動的に注文を出す「アルゴリズム取引」など、人間を介在しない売買を拡大するチャンスが生まれた。海外の証券取引所に伍して東証が成長する上で、新システムは大きな武器となる。

 「東証は新システムを稼働させ、それを期にビジネスプロセスを大きく変えた。非常にインパクトの大きいシステムだ」。審査委員長を務めた情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)所長の松田晃一氏はこう評価する。

 それ以外にも新システムには随所に先進的な取り組みがみられる。ダウンの許されないミッションクリティカルシステムのOSとして、オープンソースのLinuxを採用したほか、「不具合ゼロ」を目指して要件定義書と設計書・仕様書といった成果物を合わせて4000ページも作成した。

 各審査委員も「ソフトウエア工学の観点から見ても大きなチャレンジ。圧倒的な底力を感じた」(情報処理学会副会長の喜連川優氏)、「これだけの規模のシステムで稼働後に目立ったトラブルがないことや、Linuxを使ったミッションクリティカルなシステムであることは評価に値する」(経営情報学会会長の根来龍之氏)など、一様に高く評価した。