RFPチームでひと通りRFPを書き上げたならば,ベンダーに提示する前に,必ず社内レビューを受けることを強く推奨する。レビューの目的は,RFPに記載された要求に,漏れ,偏り,無理,無駄,矛盾がないかどうか,第三者の目を通してチェックすることである。

 従って,レビューのメンバーとしてはRFPチーム以外に,業務要求の洗い出しのときに協力してもらったエンドユーザーに参加してもらうことが望ましい。さらにエンドユーザー部門,情報システム部門のマネジャーにも参画してもらいたい。可能であれば,実際に調達の段階で最終的な決裁権を持つ経営者や上級マネジャーに参加してもらえるとなおよい。それによって,調達の最後の段階(ベンダー決定から発注金額合意の段階)になって「俺は聞いていない」とすべてをひっくり返されるリスクを解消する事ができるからである。

 プロジェクトを推進していて何が最もつらいかといえば,最後になって事情を知らないお偉いさんから,問答無用にすべてを御破算にされることである。その原因のほとんどは内容的に問題があるというよりは,事前に何も知らされずに大事なことが決まっていることに対する不満であることが多い。それを防ぐためにも,声を掛けることだけでもしたほうがよい。

 RFPのレビューでチェックすべき重要な点は以下の4つである。

(1)「目的・背景・狙い」が明確であるか

・社内だけでなく,外部の人間(ベンダー)でも分かるように表現されているか
・経営戦略や事業目標と合致した内容になっているか

(2)各要求は「漏れ・偏り・無理・矛盾」なく書かれているか

・特に業務要求に関してきちんと書かれているか(これにはエンドユーザーの協力が不可欠である)
・要求の優先順位や重み付けは設定されているか
・当たり前の要求(現行システムでできていて,新システムでも当然引き継がれる機能など)は記述されているか(現行システムへの不満だけが書かれていないか)
・要求に矛盾はないか(部署により,相反するニーズが出ることが得てしてある)
・特に重要な要求は個別の章立てにするなど,目立つように工夫されているか

(3)提案書作成要領は適切か

・提案書に盛り込んでほしい必須事項がすべて盛り込まれているか
・提案書評価がしやすいように,作成要領での指示に工夫があるか
・本編+別紙形式の指示を出しているか(当連載の「RFPにおけるコミュニケーション 分厚いだけのRFPは読んでもらえない」参照)

(4)RFPの文書としての出来栄えはどうか

・RFP自体も本編+別紙形式で分かりやすくまとめてあるか
・誤字や表記ミスなどはないか
・読みやすいデザインとなっているか(当連載の「RFPにおけるコミュニケーション 読みやすさに気を配る」参照)

 図4に,RFPをレビューするときのチェックリストのサンプルを紹介する。

図4●RFPチェックリストのサンプル
図4●RFPチェックリストのサンプル
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永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。