2010年6月11日、米ユタ連邦地裁で、米Novell社と米SCO Group社で争われていた訴訟が終結した。これでLinuxユーザーへの使用料を求めるSCOの主張は事実上、無効になった。

 7年間にもわたった米SCO Group社(以下、SCO)によるLinux関連の訴訟はようやく幕を閉じ、Linuxを扱うメーカーやユーザーにとっての懸念材料が1つ消えた。

 米ユタ連邦地裁が出した判決骨子は、「米NovellがUNIXに関する著作権を有している」ということ。これにより、SCOが起こしていた米IBM社やLinuxユーザー企業に対する訴えも、無効となる。

 この関連を理解するために、これまでの経緯をたどっていこう(表1)。

表1 米SCO Groupが起こしたLinux関連訴訟の主な経緯
表1 米SCO Groupが起こしたLinux関連訴訟の主な経緯
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 SCOが訴訟を起こしたのは2003年3月。提訴されたのはIBMで、内容は「IBMがUNIXのソースコードの一部を不正にLinuxに使用したことによるライセンス違反など」だった。

 SCOは1995年、NovellからUNIX(UnixWare)事業を譲り受けた。そのNovellは1993年に、UNIXのライセンスを含めて米AT&TからUNIX事業を譲渡されていた。そのためSCOはUNIXのライセンスを保持しているという立場から、Linuxの開発に協力していたIBMに対し、不正流用を提訴した。具体的には「カーネル2.5.69には600以上の不正行為がある」などと主張していた。

 さらに、同年5月、SCOはLinuxユーザー企業にも問題の輪を広げる。大手企業約2000社に対し「UNIXの知的財産権侵害はユーザー企業にも責任が及ぶ」といった警告書を発送した。

 一方、その訴訟の元となるUNIXライセンスの所有権をめぐり、Novellが「UNIXの知的財産権は自社にある」と発表。訴訟はNovell対SCOという構図に移っていった。

 この間、NovellとSCOが互いを提訴する一方で、SCOは大手自動車メーカーの独DaimlerChryslerなどを著作権侵害で提訴したり、SCOの社長が来日して日本メーカーに主張を伝えたりするなど、積極的な活動を進めた。ユーザーに対しては、1CPU当たり約700ドルというライセンス料を求めていた。

 2007年8月、ユタ連邦地裁で、UNIXの著作権を持つのはNovellであるとし、かつNovellがSCOに対してIBMへの訴訟の取り下げを命令する権利があると判決が下る。しかしながらSCOは控訴し、その後、再審理まで持ち込まれたことやSCOが倒産処理手続きに入ったことなどから、訴訟は長引いてきた。

 今回の最終判決で、これまでSCOが最初に起こしたIBMへの訴訟やユーザー企業への主張も、立ち消えとなる。

 これでLinuxを扱うメーカーやユーザーにとっての懸念材料が1つ消えたわけだが、「Linuxおよびオープンソースソフトのライセンス関連の懸念がすべて払しょくできたわけではない」とIPA(独立行政法人情報処理推進機構) オープンソフトウェア・センター(OSC)の田代 秀一センター長は述べる。OSCでは2010年5月31日に「OSSライセンスの比較および利用動向ならびに係争に関する調査」を公開した。調査結果から、「ライセンスをよく理解しないまま使い、ライセンス違反になっているメーカーやユーザーが多い」と田代センター長は警告を発する。