野村総合研究所(NRI)で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務めて急成長を支え、『ダメな“システム屋”にだまされるな!』(日経情報ストラテジー編)の著者でもある佐藤治夫氏が、情報システムの“ユーザー企業”における経営者・担当者の視点で、考慮するべきことや、効果的な情報化のノウハウなどを解説する。(毎週月曜日更新)

 第27回から前回(第36回)にかけて、政府・自治体とIT(情報技術)活用について述べてきました(途中でサッカーワールドカップ南アフリカ大会の話題を挟みつつ)。

 本題の情報システムの“ユーザー企業”の話題に戻ります。今回から、成熟市場あるいは供給過剰の分野で情報システムを活用するすべを探りたいと思います。

 情報化が最大の効果を発揮するのは、需要と供給が総量で合致している時です。需要と供給の両方が過剰ではなく、また、不足でもないという状況です。需要を引き金として供給を探せば見つかる可能性が高く、逆もまた当てはまります。こういう場合、対象を自動的に検索・探索したり、見つけたりする情報化は大きな成果を生むでしょう。

「富士山型」から「茶筒型」へ

 ただし、日本国内のような成熟社会あるいは成熟市場では、供給過剰である分野が多いのが実情です。こうした分野では、需要と供給が合致しているという“古い”発想で情報化を推進しても、効果を得られない可能性が高くなります。

 成熟市場で、かつ、扱う製品・商品の「ライフサイクル」が短い場合、最初に考えるべき情報化は「死に筋」発見のためのものです。コンビニエンスストアのPOS(販売時点情報管理)システムがその典型例です。

 かつて、製品・商品のライフサイクルは「富士山型」になると言われていました。横軸に時間、縦軸に販売数量を取ってグラフを描けば、次第に販売数量が増えていき、横ばいのピーク状態を経て、次第に寿命を迎えるというものです。なだらかに上がり、横ばいを経て、なだらかに下がるという、富士山の稜線(りょうせん)に似ています。

 ところが、消費者が品質や流行に敏感になっている、敏感すぎる日本の成熟市場では、富士山型を描く製品・商品は珍しいのが現実です。特に小売業などでは、「茶筒型」のライフサイクルを持つ商品が増えています。いきなり垂直に立ち上がり、短い横ばい期間を過ぎた後に、真下に落ちるかのように寿命を迎えます。

 売れてきた製品・商品、すなわち「売れ筋」は“人間系”で、人が見ればすぐに発見できます。一方で、多品種少量であればあるほど、昨日まで売れていたのに突然売れなくなる「死に筋」を発見することは容易ではありません。「死に筋」を発見するまでに時間がかかれば、不良在庫を抱えたり、他の商品を売る機会を失ったりしてしまいます。