企業のIT投資が本格的に回復しそうだ。日本銀行が2010年7月2日に発表した、今年6月時点の調査「全国企業短期経済観測調査(短観)」の業種別のソフトウエア投資額の結果から、その兆候がうかがえる。

 「製造業」「非製造業」「金融機関」を含む「全産業」の2010年度のソフトウエア投資額の計画値は、前年度比3.1%増という結果になった()。これは今年3月に実施した前回調査での投資額の計画値を1.5%上方修正した値である。この3カ月間で、多くの企業が今年のIT投資予算を上乗せしたことが分かる。

表●業種別に見たソフトウエア投資額の前年度比
「第145回全国企業短期経済観測調査」を基に作成
* 3月調査時からの増減比率。「前回調査比修正率」のこと
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表●業種別に見たソフトウエア投資額の前年度比<br>「第145回全国企業短期経済観測調査」を基に作成<br>* 3月調査時からの増減比率。「前回調査比修正率」のこと

 業種別に見ても、半数以上の産業が3月時点の調査よりも上方修正した。製造業は3月調査よりも3.3%増やし、前年度比で4.2%増である。特に、投資額の大きい自動車産業を含む「輸送用機械」は前年度比24.6%増で、製造業のなかで最も高い数値だった。前回調査に比べても9.6%上方修正した。

 金融機関は、前回調査から6.5%上方修正し、前年度比では3.0%増である。投資額の大きい「銀行業」が前年度比12.0%増になったことが大きく寄与している。

 一方、非製造業は前年度比2.8%増。前回調査比では0.5%減とあまり変わらなかった。

 調査結果を総合すると、2010年後半は、多くの企業がシステム開発プロジェクトを開始する、と見込まれる。「今秋以降、商談が増えるはずだ」と複数のITサービス会社の幹部は期待する。

 ただし、「2008年秋のリーマンショック以前の水準にまでIT投資が回復するまでには、相当の時間がかかるだろう」とドイツ証券の菊池悟シニアアナリストは指摘する。

 日銀短観は日本銀行が四半期に1度発表する統計調査。業種別のソフトウエア投資額を公表しており、IT投資の傾向をつかむための指標の一つである。