仮想化環境の運用管理について、前回は、従来の運用管理と異なる11のポイント(要件)を解説した。では、これらを実際の運用管理にどう実装していったらいいのか――。その基本方針を考えることが今回のテーマである。
仮想化環境の運用管理に有用なツールには、大きく分けて「仮想インフラ管理ソフト」「サーバー管理ソフト」「統合運用管理ソフト」「グリッドOS/クラウドOS」などのタイプがある(表1)。それぞれについて、特徴を見ていこう。
仮想インフラ管理ソフトは必須のツール
仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアは、その名の通り仮想化の基盤部分であるVMM(Virtual Machine Monitor)やハイパーバイザーなどを管理するためのソフトウエアである。
このタイプのソフトウエアは、仮想化されていない物理的なサーバーを管理できない。また残念ながら、異なったベンダーの仮想化ソフトウエアをまとめて管理することも、標準状態ではできない製品が多い(プラグインなどで対応できる製品は増えている)。
ただし同一ベンダーの製品を管理する場合に提供される機能は、後述する他のソフトウエアなどと比較して最も充実している。多くのケースで、仮想化環境の運用管理に必須のツールとなっている。
サーバー管理ソフト
サーバー管理ソフトウエアは、その名の通りサーバーを管理するソフトウエアである。主要なOSに仮想化機能が標準搭載されていくなかで、サーバー管理ソフトウエアにも仮想化環境の管理機能が追加されていく傾向にある。
特に仮想化ソフトウエアとこの種のツールとの組み合わせは、仮想サーバー(仮想マシン)をレンタル提供するプロバイダーなどでの利用において効果を発揮している。
統合運用管理ソフト
比較的大規模なシステムの運用管理に従来から利用されてきた統合運用管理ソフトウエアには、多くの場合、最初から仮想化環境を管理する機能が搭載されている。あるいは、仮想化に対応するためのアドオン・パッケージなどが用意されている。
統合運用管理ソフトウエアの中には、仮想インフラ管理ソフトと連携することで、仮想化環境の管理機能を実現しているものも多い。このタイプの製品は、既存システムと組み合わせて仮想化環境を利用する場合、とても有用である。
統合運用管理ソフトウエアの拡張性は非常に高い。仮想インフラ管理ソフトには含まれないインシデントや問題の管理データベース、および大規模な構成管理データベースなどを搭載している製品が多い。また、多くの統合運用管理ソフトウエアがその進化の方向として自律運用機能を搭載している。
グリッドOS/クラウドOS
グリッドOS/クラウドOSは、グリッド・コンピューティングまたはクラウド・コンピューティング環境を比較的容易に構築するために設計されたOSである。一般的にグリッドOSは、システムを構成する個々のハードウエアの違いを吸収する目的で、仮想化技術を積極的に利用している。またクラウドOSでは、仮想化環境を利用することが、ほぼ前提となっている。
グリッドOSやクラウドOSをインストールしたサーバー群は、専用の管理ツールによって制御され、柔軟なサービスを提供できる。新しいカテゴリの製品であるため、導入事例が少ないという問題や、ある程度のスケールがないと導入効果を得にくいという問題はある。しかし、新規にサーバーファームを構築する場合は検討に値する製品である。
仮想ラボ自動化システム(VLA)
仮想ラボ自動化システムは、企業の研究開発部門や品質管理部門で日々利用されている各種システムの「スクラップ・アンド・ビルドを自動化する」ためのソフトウエアである。複数の仮想マシンで構成されたシステムをまとめて展開・管理する機能を中心に、性能評価や品質保証に必要な機能を追加した製品が提供されている。
開発・検証用ハードウエアリソースの確保に必要なコストと時間を圧縮できるため、導入を進めている企業が増えている。さらに、Amazon EC2などのクラウド・サービスを選択できる製品が増えているほか、運用管理機能の強化が進んで、統合運用管理ソフトウエアと呼んでも見劣りしない製品も増えている。
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ここまで仮想化環境の運用管理ツールとして5つのタイプがあることを説明した。自社の既存システムや運用要件、今後の仮想化計画を基に、運用管理ツールのタイプを大まかに絞り込んでもらいたい。次回は、実際に運用管理ソフトを選択する際の具体的なポイントと、ツール導入時の考慮点について説明したい。