LANの帯域が足りない---。仮想環境へ移行するときに突き当たる壁の一つである。1台の物理サーバーで多数の仮想サーバーを稼働させるため、一つのNICだけでは帯域が不足してしまうことがあるのだ。例えば、人事・給与計算ASP大手のエイチアールワンは、仮想化技術で約200台のサーバー集約を実施するに当たり、スイッチとサーバーの接続を100Mイーサネットからギガビットイーサネット(GbE)に増強した。

 仮想環境を導入する際には、ほかにもネットワーク面で考えておくべきことがある。NICやLANスイッチの冗長化もその一つ。1台の物理サーバーに多数のシステムが載ることになる仮想環境では、障害の影響が及ぶ範囲が格段に広がる。このためNICにまで配慮した冗長化が欠かせない。実際、仮想環境の先進ユーザーであるアステラス製薬、エイチアールワン、ニチレイ(設計は日立フーズ&ロジスティクスシステムズ)、フーズネクストなどは皆、チーミングという機能を使ってNICを冗長化するなど、ネットワークに注意を払って仮想環境を構築している。

 仮想環境を構築し、それを期待通りに動作させるには、ネットワーク環境の見直しは避けて通れない。

仮想環境の構成要素を一通りチェック

 では実際、どのような点に留意すべきか。まず、典型的な仮想環境の全体像を見ておこう。

 物理的なインフラとしては、仮想サーバーを稼働させるための物理サーバー、ストレージ、複数の物理サーバーを束ねるスイッチで構成される。一般的には、複数の物理サーバーを「クラスター」あるいは「リソースプール」という単位で運用する。

 クラスターはさらに上位のスイッチで束ねられ、ルーターを通じてインターネットや他の拠点などと接続される。

 物理サーバー上では、複数の仮想サーバーが稼働する。仮想サーバーは、物理サーバーのハードウエア(CPUやメモリーなど)をソフトウエアで仮想的に実現した「仮想マシン」(VM)と、その上で稼働するサーバーOSやサーバーアプリケーションで構成される。また物理サーバー上では、複数の仮想サーバー同士を接続する「仮想スイッチ」も稼働している。

 物理サーバー上で仮想マシンを実現するプラットフォームとしては、米ヴイエムウェアの「VMware」、米マイクロソフトの「Hyper-V」、米シトリックス・システムズの「XenServer」─の3製品が主に使われている。基本的な機能は共通しているが、仕様を細かく見ていくと異なる点が多い。

4カ所の設計場面ごとにポイントを確認

 この構成の中で、特にネットワーク周りの設計について注意すべき部分は、大きく4カ所ある。(1)「ポート・帯域設計」、(2)「冗長化・耐障害設計」、(3)「ストレージ設計」、(4)「仮想スイッチ設計」---である。

 この特集では、仮想環境における設計個所ごとに、最適なネットワークを構築するためのポイントを見ていく。

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