仮想環境を構築する場合、ネットワーク周りで、まず考慮する必要があるのは、物理サーバーのネットワーク・ポート(あるいはNIC)の数と帯域である。
仮想環境を構築する場合、通常の物理環境に比べて、より多くのポートが必要となる。理由は、各用途の通信が互いに帯域を圧迫して悪影響を与えないようにするためである。
推奨ポート数は、例えばVMwareの場合、(1)仮想サーバーが外部と通信するためのVM用、(2)ハイパーバイサーなどの管理用、(3)ライブマイグレーション機能のVMotion用、(4)ストレージ用─の4種類である(図1)。
XenServerの場合は、仮想マシン用、管理用、ストレージ用の3種類のポートを使うことが推奨されている。ライブマイグレーション(XenMotion)やHA機能は、管理用ポートを共用する考え方である。オプション機能であるプロビジョニング機能を利用する場合は、もう一つ別のポートを使うことも推奨されている。
Hyper-Vの場合は逆にもっと多く、仮想マシン用、管理用、ライブマイグレーション用、ハートビート用、ストレージ用という5種類の用途ごとに異なるポートを用意するのがベンダー推奨である。
割り切ってポートを共用する
ただ、コストを抑えるために既存の物理サーバーを使うというケースは珍しくない。この場合、ベンダーの推奨通りにポート数を装備できるとは限らない。特に、古い型のブレードサーバーなどでは、実装面積の制約からポート数が少ない製品がある。
こうしたケースでは、割り切っていくつかの用途でポートを共用すればよい。例えばVMwareを使っていても、XenServerの場合と同じ3ポート(それぞれ冗長化すると6ポート)構成にする。2ポートしか使えない場合は、トラフィック量のバランスなどを考えて分ける。具体的には、VM用とストレージ用を別のポートとし、管理用、VMotion用はストレージ用ポートを共用する。
比較的大規模なシステムで、少しでもポート数を節約したいなら、物理サーバーにメリハリを付ける工夫も考えられる。例えば、短時間のサービス停止なら許容できる仮想サーバーにはポート数が少ないサーバーマシンを使ってコストを抑える。
ギガイーサへの増強は必須
ポート数とともに、物理サーバーからのリンクを収容するLANスイッチの帯域も十分に考慮すべきである。最近の企業ネットワークなら、仮想環境でなくても、少なくともサーバーエリアのネットワークはGbEが主流になっている。ただ、100Mビット/秒のイーサネットが全く残っていないわけでもない。
例えばエイチアールワンは、200台のサーバー(独SAPのERPなど)を12台の物理サーバー(VMware ESX3.5)に集約。仮想環境の導入に合わせて、100Mビット/秒から1Gビット/秒に切り替えるべく、LANスイッチをリプレースした。おかげで、仮想環境を導入してもネットワークがボトルネックになったことはないという。
もちろん、集約する仮想サーバーの数や種類によっては、GbEでも帯域が不足する可能性はある。こうなると、GbEの一段上の規格である10ギガビットイーサネット(10GbE)が視野に入る。今のところ「まだ価格が高すぎる」というユーザーの評価だが、2011年以降は10GbEの価格が下がって普及が始まると言われている。VMware(ESX/ESXi 4)やHyper-V 2.0、XenServer 5.5といった最新の仮想化プラットフォームも、10GbEに対応済みだ。