マネジャーは面と向かって問題行動を指摘されることが少ない立場にある。だから、しっかりと内省できることが重要な資質になる。この傾向はマネジャー向けの啓蒙書でも見られ、何をすべきかを説く本は多いが、問題の指摘をする本が意外と少ない。

 そんななかで、本書はマネジャーが犯しやすい問題行動を13の「大罪」として整理した啓蒙書。マネジャーに必須の資質である内省を支援してくれる本である。

 本書が指摘する問題行動を、少し長くなるが列挙してみよう。「結果に対して責任をとらない」「部下の育成を怠る」「やる気を起こさせない」「組織内での立場を忘れる」「部下と一対一で接しない」「利益の重要性を忘れる」「問題点にこだわりすぎて目的を見失う」「部下との間に一線を引かない」「目標達成基準を設けない」「部下の実務能力を過信する」「部下のたるみに目をつむる」「成績のよい部下だけに目をかける」「アメとムチで部下を操ろうとする」。

 読者のなかには、自分のこととして思い当たった人もいれば、上司の顔が思い浮かんだ人もいるかもしれない。本書には各問題行動の自覚や脱出へのポイントを分析するためのツールが準備されており、自分の行動の分析や問題解決の手助けをしてくれる。各章の最後には「行動誓約書」というページがある。各章の記述で個人的に応用できることと、その活用の仕方などを記入することで、内省と改善を促してくれる。

 マネジメントがうまくいかないときに、問題にふたをして新しいものに飛びつくのは簡単だ。それなりに成長しているという満足感も得られる。しかし、問題を分析し、それに愚直に向き合わない限り、マネジメントの本質的な改善にはなかなか結びつかない。

 本書を使うことによって、失敗事例を参考にしながら自分の行動を内省し、書かれている問題解決アドバイスを役立てて、マネジメント行動を改善することができる。リフレクティブなマネジャーを目指す人には必読の一冊だと言える。

評者:好川 哲人
神戸大学大学院工学研究科卒。技術士。同経営学研究科でMBAを取得。技術経営、プロジェクトマネジメントのコンサルティングを手掛ける。ブログ「ビジネス書の杜」主宰。
マネジャー13の大罪

マネジャー13の大罪
W・スティーヴン・ブラウン著
松野弘訳
日本経済新聞社発行
1575円(税込)