経営とIT(情報技術)の融合が言われて久しい。だからCIO(最高情報責任者)の重要性が論議されている。それを経営方針に掲げて実践しているのが、ヤマト運輸代表取締役で常務執行役員の金森均さんだ。ヤマトグループの情報システム会社、ヤマトシステム開発の出身。1979年に入社し、外販を中心に26年間、設計・開発・運用・営業・企画に携わり、お客様の業務に入り込み、同じ土俵で仕事をすることを学んだ。

 金森さんは、お客様のシステム設計の常識とシステム開発者として外から見た常識があまりに違うことがしばしばだと話す。内部で考えるシステムはその会社の常識を超えられない。外から見ると改めて経営が俯瞰的に見え、それをシステム設計に織り込むことができる。ヤマトシステム時代の経験から、ITと経営は右の扉と左の扉のように同レベルで並列なものだと考えている。その真ん中にあるのがビジネスモデルだ。ITが経営戦略を具現化するインフラを提供していくことで初めてビジネスモデルが出来上がる。

成長するために仕組み・枠組みを見直す

 ヤマト運輸に移籍するきっかけは、ヤマトが持ち株会社制に移行し、会社間の人の流動が活発になったからだ。情報システム部長、経営戦略部長を経て、常務執行役員、代表取締役になった。ヤマト運輸は、ヤマトホールディングスという持ち株会社の一員になる変わり目を経た。これからの大きな目標はヤマト運輸だけではなくグループとしてどう成長するかだ。宅急便をどう伸ばすのかだけでなく、モノを運ぶ以上のロジスティクスが求められる。eビジネスやホームコンビニエンス、決済など、グループ全体を成長させるためには、仕組み・枠組みを一度見直す必要がある。新しい仕組みには、ITをインフラとして定着させることが必須で、数年後をにらんだIT機能や優位性を入れ込んでいく。

 金森さんは、次世代の仕組みを作るときに、ちょっと考えて無理だと思うことは、きっとできると信じることにしている。今できるものの積み上げではなく、こうありたいというイメージを描く。これこそが経営との両輪、なぜなら経営も同様に、常に数年先を見据えたものだからだ。

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
 シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA