レビュー会議が失敗する背景に,典型的な三つの原因がある。それらを回避し効果を高めるには,プロセスを踏み,3回に分けて実施するとよい。レビューの専門家に,その方法とコツを解説してもらう。

細川 宣啓  日本IBM

 みなさんの現場では,こんなレビュー会議をしていないだろうか。議論が発散して時間が掛かる割に,重大な欠陥を検出できない。議論が活性化せず,みんな下を向いている。なじり合いやケンカの場になっている─。

 そもそもレビュー会議には,スキルの高いITエンジニアが参加するはず。それなのに,どうして冒頭のようなレビュー会議になってしまうのか。

 筆者は現場の開発リーダーや品質保証部門という立場で,数多くのレビュー会議を見てきた。その経験からいえるのは,レビューが失敗に終わる背景には典型的な原因が存在し,それらを回避するための工夫やコツがある,ということだ。

 以下では,組織的なレビューの要といえる「レビュー会議」に焦点を当て,失敗に終わるレビュー会議の典型例と,その主要な原因を探る。さらにその主要な原因を踏まえて,効果的なレビューの実現に役立つ考え方,方法,コツを紹介する。

レビューが失敗する三つの原因

 まずレビューが失敗する原因から考えてみよう。筆者が考える主要な原因は三つある。

 一つ目は,レビューの目的をあいまいにしたまま,レビューアを招集することだ。その場合,「どんな欠陥を重点的に検出するか」という判断が各レビューアにゆだねられ,それぞれの観点で思い付いたことを指摘するようになる。

 そうしてレビューの観点がぶれると,どうなるか。例えば,ベテランや声の大きいレビューアの意見ばかりが重視される。彼らは往々にして上からものを言うので,レビュー会議は,設計担当者が「怒られる場」と化す。

 もっとひどいケースもある。例えば,レビューアとして参加している画面の開発担当者は,利用者に見える欠陥をつぶしたいと考え,データベースの開発担当者はデータベース項目の制御区分における処理の抜けや漏れを確認したいと思う。テスト担当者は,テスト・ケースを導き出せるかどうか,テストを実施しやすいかどうかを考える。こうしたバラバラの観点で検出した欠陥が一気に噴出すると,レビューを受ける設計担当者は,一種のサンドバッグ状態にさらされる。

 さらに悲惨な,設計担当者が「レビュー麻痺」になるケースをご存じだろうか。これは,レビュー会議を何日にもわたり実施する場合に起こりやすい。会議の場で,「何を目指して設計すればよいのか」「どんな品質を確保すべきか」という共通認識もないまま,ひたすら設計書をダメ出しされ続けると,最終的に設計担当者は「私は何をすれば許してもらえるのですか?言われたとおりに修正しますから,全部指摘してください」という心理状態に陥る。これが,レビュー麻痺である。