記事中のわずかな間違いも見逃さない。そんな新聞社の校閲部門のレビューとはいかなるものか。そこには,設計書のレビューに通じるテクニックと,二重チェックの体制が存在した。

 「米海軍普天間飛行場」「漱石は1901年,政府から文学博士号を授与される」──。これらは,読売新聞社の校閲部門が間違いを見つけ修正した記事の該当個所である。どこが間違っているか分かるだろうか。

 普天間飛行場の所属は米海兵隊なので「米海兵隊普天間飛行場」が正しい。夏目漱石が文学博士号を授与されたのは,正しくは1911年。

 そんなの分かるわけがない,と思ったかもしれない。しかし実際にそれを見抜いているのが,新聞社の校閲部門である。しかも校閲作業を行うのは,記事の原稿が書き上がってから印刷工程に進むまでの限られた時間だ。新聞社の校閲部門には,専門家集団として磨き上げた「レビュー力」が存在する。

 では,校閲部門のレビュー力とはいかなるものか。設計書にも通じるレビューのポイントとして「校閲のテクニック」と「二重チェック体制」がある。以降で詳しく見ていこう。

専門知識なしでは校閲できない

 読売新聞東京本社の校閲部門には69人が所属しており,朝刊・夕刊のニュース面1ページごとに,1人の校閲担当者をアサインする。面を担当するから,通称「面担」である。面担は,総合,政治,スポーツといった6分野のいずれかのグループに所属し,2~3年は異動せず専門性を磨く。やはり「深い専門知識がなければ,校閲作業はできない」(読売新聞東京本社 編集局校閲部 部長 鈴木明男氏)のである。

 朝刊にアサインされた面担の1日の仕事は,夕方5時からの編集会議の結果を受けて始まる。編集会議では,取材,編成,校閲の3部門の責任者が集まり,どのネタをどの面に収容しどれだけの大きさで扱うかをあらかた決める。

 この結果を基に,早速“予習”である。面担は,掲載が決まったネタに関係する過去の記事を読み直したり,関連資料を集めたりしておく。

 1~2時間もすると,取材部門から1本,また1本と,記事が書き上がってくる。ここからが面担による校閲作業の本番である。届いた記事1本ごとに,赤字の修正を入れていく。