この「Webを支える技術」は、Web系開発の中上級者向け雑誌「WEB+DB PRESS」での連載がベースとなっています。連載は2年間続きましたが、1年ほどたったころに編集者から本にしないかと言われました。
最初は断ったんですけど、連載を続けるうちに、HTTPやURIといったWebの基本的な技術の解説本が手に入らないという状況が分かってきました。例えば、僕もお世話になった「Webプロトコル詳解」や「HTTP詳説」という有名な書籍がありますが、これらは絶版になっています。
だから、連載自体は中上級者向けだったのですが、Webの歴史を知らない新人に向けて、副題にあるような技術をきちんと教えられる本を書きたいと思ったのです。既に執筆に入っているときだったんですが、「高橋メソッド」で有名な「日本Rubyの会」会長の高橋征義さんが、「HTTP関連本は壊滅状態だ。今の人はどうやってHTTPを学ぶんだろう」といった内容をブログに書いていて、それを見た僕と編集者は「これはいける」と思ったものです。
この本の特徴の一つは、「REST」(Representational State Transfer)について解説した点です。これまでRESTについて日本語できちんと解説した本は、僕が監訳した「REST-ful Webサービス」だけでした。
RESTというのは、Web全体のアーキテクチャーを特徴付けている流儀や様式を指します。これは「アーキテクチャースタイル」と呼ばれています。Webがこれだけ成功したのは、「クライアント─サーバー型」や「ステートレスサーバー」といったいくつかの特徴のおかげです。それらをまとめたものがRESTというわけです。
かつてWebサービスと言えば、「SOAP」が注目を集めていました。しかし、「Webを成功させているのはRESTというスタイルで、SOAPはそのスタイルに沿っていない。WebサービスはRESTの方向に進むべきだ」という議論が、2000年から2003年くらいの間に主に英語圏で行われていました。でも、日本には全然知られていなかったのです。だから、これは広めないといけないと考え、個人的に啓蒙活動を進めてきました。
HTTPとかURIを単純に仕様として知っているだけでは、ほかのサービスと簡単につながるとか、スケーラビリティーがあるといった、“Webらしい”サービスは作れません。RESTは、そうしたサービスを作る際の設計指針になります。2010年の今、単に仕様だけの解説ではなく、“Webらしい”サービスとはどうあるべきか、伝えたいという思いでこの本を書きました。
Webを支える技術
山本陽平著
技術評論社発行
2699円(税込)