IFRSへの対応にかかった費用は、「売上高が5億ユーロ(625億円 *1ユーロ=125円として換算)未満の企業の場合、平均55万4000ユーロ(6925万円)。50億ユーロ(6250億円)以上の企業の場合は平均343万ユーロ(4億2875万円)」─。

●2005年に強制適用を実施した欧州企業の1社当たりの平均対応コスト
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 これは2005年にIFRSが強制適用になった欧州企業におけるIFRS対応コストの調査結果だ(2007年、英国勅使会計士協会調べ)。IFRSに移行する前の会計基準が国ごとに異なるため、日本企業も同様の費用がかかるとは限らないが「億単位」になる可能性は高そうだ。

 費用の内訳を見た場合、規模が大きい売上高50億ユーロ以上の企業ほど、全費用に占めるIFRSプロジェクトチームの人件費の割合が大きく、平均76万8000ユーロ(9600万円)だった。この費用にはIFRSプロジェクトチームに参加しなかった現場の人件費は含まれていない。現場部門の人件費は29万6000ユーロ(3700万円)で、人件費だけでも1億円以上がかかったことになる。

 日本で実際に企業のIFRS対応を支援している専門家が、IFRS対応の費用や工数を大きく左右しそうな要因として挙げるのが「海外にある子会社の数」だ。何カ国にどんな規模の子会社があるかによって、「工数が大きく違う」とアクセンチュアの野村エグゼクティブ・パートナーは話す。

 専門家が海外子会社を気にかけるのは、本社とは業務のやり方が違うことが多いからだ。国ごとに商習慣が異なるうえ、「欧米の企業と比べて、日本企業は海外子会社に対するガバナンスが弱い。IFRS適用を機にガバナンスを強化しようとすれば対応コストは大きくなる」と日本IBMの松尾パートナーは指摘する。

 「情報システムを変更するかどうかも、費用を大きく左右する」とデロイトトーマツコンサルティングの中村シニアマネジャーは付け加える。連結グループ全体の会計システムを統一する方針を立てた場合は、情報システム投資だけで数億円がかかる可能性もあるだろう。

対応方針や規模、子会社の数などの要因によって大きく変わります。