プライベートクラウドのネットワークは、従来以上の拡張性、信頼性、安全性というインフラとしての基本的な役割に加えて、クラウド特有となる利用者のオンデマンドな要求に対応しなくてはなりません。この要求仕様を満たすためには、従来のネットワークの機器選定、ネットワークのアーキテクチャー、そして運用を考え直す必要があります。

 こうした背景を踏まえて今回は、特にプライベートクラウドのネットワークの構築に向けた機器の選定からネットワーク設計、運用のポイントを紹介していきます。

プライベートクラウドの課題

 まずはプライベートクラウドのネットワークに触れる前に、米国国立標準技術研究所によるクラウドコンピューティングの定義を元に、従来のデータセンター構築との違いについて考えてみましょう。

 定義に従えば、クラウドコンピューティングでは、従来のデータセンターのネットワークに加えて、利用者のオンデマンドな要求に従って、マルチテナントのコンピュータ資源を、迅速かつ弾力的に提供する機能が求められています。もちろんコンピュータ資源だけでなく、ネットワーク資源もこの利用者の要求に従って迅速かつ弾力的にプロビジョニングができることが必要条件となります。

 特に、プライベートクラウドでは企業が中心的な利用者であり、従来保有していたIT資源の代替として、プライベートクラウドを通じてIT資源を利用しています。当然この利用モデルを選択する一つの利用者の動機がコスト削減であり、最低でも従来と同等もしくはそれ以下でなくてはなりません。もちろんこのコストには、ハードウエアのコストだけでなく、人的コストも含まれます。

 利用者の要求に応じた迅速かつ弾力的なプロビジョニング機能を持つより複雑なネットワークインフラを、従来のデータセンター並みのコストで運用する、という大きな課題が課せられています。言うまでもなく、この議論は現状のデータセンターとプライベートクラウドとの比較であり、この議論に加えて、膨大に増えるトラフィック増を鑑みた拡張性の高さもプライベートクラウドでは求められます。

機器選定:VLAN数、MACアドレス数に注目

 従来のデータセンターでは、新しいサービスのIT資源の投入に合わせて新しいネットワークの物理回線の設置・設定を行っていました。しかし、利用者の要求に合わせた迅速かつ弾力的なネットワーク資源の提供を行うプライベートクラウドでは、ネットワーク回線の設置・設定を半自動化する必要があります。半自動化するには、VLANなどの仮想ネットワーク設定を行っていくことになります。

 仮想ネットワークでは、ネットワーク機器のサポートするVLAN数、MACアドレス数を考慮する必要があります。これらの要素は、同一ネットワーク機器上に展開できる仮想ネットワーク数と、その仮想ネットワークに接続できるノード数を決定します。従って、プライベートクラウドではVLAN数やMACアドレス数が、ネットワーク機器のパフォーマンスを決定する重要な要素となります。

 VLANやMACアドレスの最大利用可能数はネットワーク機器のカタログに掲載されています。サーバーファームのスイッチとして、VLANは4000以上、MACアドレスは2万程度サポートすることが望ましいでしょう。

 プライベートクラウドにおいては、ネットワーク機器のポートが余っているにもかかわらず、VLAN数やMACアドレス数の上限の制約が原因で、新たなネットワーク機器の投入が必要となるケースも十分に考えられます。こうした機器のリソース的制約条件は、プライベートクラウド構築のコストに跳ね返るので、注意が必要です。