前回、プライベートクラウドのネットワークを構築するに当たって、「サービスの継続性」「サービスの安定性」という二つの観点において、今後の技術トレンドを踏まえながら解説しました。今回は「サービスの迅速な提供」という観点で、技術解説を行います。

 トラフィックタイプによって別々のインフラを用意するのではなく、統一化されたインフラで、使用状況の変化に応じて使い方が変更できる環境を用意しておく必要があります。

 大規模なシステムでは、通常、LANのほかにストレージ用のFC(Fibre Channel)ネットワークであるSANも構築しなければならず、ネットワーク構成が複雑になりがちです。サーバーにはイーサネット用のNICと、FC-SANに接続するためのHBA (Host Bus Adapter)が必要です。FC-SANの代わりにiSCSIを使用したストレージアクセスの場合も、高速アクセスが必要な場合は、LAN用とは別のiSCSI用に使用する別のNICを用意する必要があります。

 機器の増加はコストに影響し、電力もかかり、運用管理の負荷も増え、膨大な数のケーブル運用時にミスを誘発する可能性だけではなく、空気の流れを阻害し冷却設備への投資も必要となります。これらの課題を解決する方法としては、LAN環境とFC-SAN環境を統合するインフラの構築があります。

図1●IO統合
図1●IO統合

 イーサネット上でLAN環境とFC環境、つまりIO統合する技術として、ANSI INCITS T11にて2009年6月3日に標準化が完了したFCoE(Fibre Channel over Ethernet)があります。

図2●FCoE
図2●FCoE

 FCoEはパケットロスにシビアなプロトコルです。FCoEをイーサネット上で提供する技術として、IEEEにて来年中ごろには標準化完了予定のDCB(Data Center Bridging、拡張イーサネットと呼ばれることもある)があります。DCBで提供される技術には、次の三つがあります。