富士ソフトは2009年4月から、グーグルがクラウドサービスとして提供するグループウエア「Google Apps Premier Edition」を利用している。利用者数は、正社員や派遣社員などを含む1万人である。Google Appsの利用規模として、国内最大級だ。情報共有システムを完全になくす。システムインテグレータとして先陣を切って、システムを「所有」せず、「利用」する体制へと移行する。<日経コンピュータ2009年9月2日号掲載>

 「従来に比べシステムコストを安く抑えることができている。信頼性についても問題はない」。富士ソフトの間下浩之 営業本部副本部長はGoogle Appsを導入したことについて、こう話す。さらに、「従業員のグループウエアの活用が進み、業務効率が高まったことも良かった」と続ける。

図1●Google Appsを導入し、既存システムの置き換えと新機能の追加を実施した
図1●Google Appsを導入し、既存システムの置き換えと新機能の追加を実施した
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 同社は、Google Appsが備える六つの機能すべてを利用している。電子メール機能「Gmail」とスケジュール管理機能「Google カレンダー」については、従来システムをリプレースした格好だ(図1)。

 富士ソフトは2009年10月にも、グループエアのシステムを持たずに、利用する形態に完全に移行する。Google Appsの各種機能はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の形態で提供されているので、社内にシステムを保持する必要がないからだ。

 最後まで社内に残っていた電子メールシステムを2009年10月に撤廃。これよりも前の7月、Google Appsと並行稼働させていた従来のスケジュール管理システムもやめている。

 富士ソフトは、メールとスケジュール管理を置き換えだけではなく、Google Appsの導入を機に新しい機能を活用することにした。

 新たな機能として導入したのは四つだ。文書やスプレッドシートなどを作成・共有できる「Google ドキュメント」、チャット機能を備えた「Google トーク」がそうだ。Webサイトを作成・編集するための「Google サイト」、動画共有機能の「Google ビデオ」も活用する。

 Google AppsのユーザーIDを取得していれば、いずれの機能も自由に使うことができる。「導入効果などについて深く考えず、とにかく豊富な機能を活用してみようと考えた。当初は不安だったが、想像以上に利用者の活用度が高い」。間下副本部長は手応えをつかんでいる。

スケジュール管理システムが複数ある

 富士ソフトがGoogle Appsを導入するきっかけは、スケジュール管理システムとメールシステムが老朽化したためである。2007年からシステム再構築を検討し始めた。

 従来、スケジュール管理システムについては、全社で統一できていなかった。異なるソフトで構築したシステムが社内に複数あったため、運用のコストや手間がかかっていた。

 電子メールのシステムは共通化を終えていたが、ハードウエアが老朽化していた。拡張性などの面から見直す必要があった。

 システムの使い勝手の面でも課題を抱えていた。例えば、会議のセッティングだ。異なるシステムを使っている部門の担当者についてはスケジュールを確認できなかった。このため電話やメールで会議の時間を決めるなど、効率が悪かった。

 さらに施設を予約する場合、スケジュール管理システムではなく、別途構築した専用システムを使わなければならなかった。施設予約機能について、スケジュール管理システム同士でデータをやり取りする仕組みがなかったためである。