技術部最高技術責任者の橋本健太氏
技術部最高技術責任者の橋本健太氏
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 料理レシピ専門サイトのクックパッドは料理情報に特化した情報サイト運営で急成長している。2009年7月に東証マザーズへの株式上場も果たした。CIO(最高情報責任者)に当たる橋本健太技術部最高技術責任者は元はバイオテクノロジーの研究者。料理とレシピ情報提供という新規事業に魅せられてクックパッドに参画した。

 クックパッドは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の学生だった佐野陽光氏(現代表執行役)が1997年に神奈川県藤沢市で立ち上げた学生ベンチャーである。佐野氏と同級生だった橋本氏はアルバイトとして手伝ったが、やがてクックパッドを離れて遺伝子解析などの研究に没頭した。7年後の2004年に再びクックパッドに参画した。

 橋本氏はその理由について「研究分野では、自分の仕事の成果が数十年後にしか表れないので欲求不満があった。何かをしたら次の日には結果が出るインターネットの世界に飛び込みたいと思った」と話す。

 当初は事業企画を担当したが、構想から実現まで時間がかかるため、やがて自分でプログラムを書くようになった。橋本氏が技術を担当する前は、会員管理システム開発などを外部のIT(情報技術)ベンダーに外注していたが、「新しいサービスを始めたり修正するのに時間がかかるのが嫌だった」(橋本氏)ため、2006年までにシステムを作り直して内製化した。

 そんな橋本氏だけに、システム開発では“速攻”が信条だ。2007年に開発した「たべみる」(ウェブサイトで検索された料理や食材などのキーワードのログから消費者の動向を分析するシステム)は1人の技術者が1カ月ほどで作った。Rubyなど習得が容易で開発生産性が高いプログラミング言語を活用したのが大きな要因だ。その後もシステムの拡充を続け、今ではたべみるのデータを食品メーカーなどに外販し収益を得るモデルを確立した。

 橋本氏は「クックパッドの技術者は、技術を追求するよりもユーザー(サイトを利用する一般消費者や食品メーカー)に役立つものづくりに専念してほしい」と話す。常に使いやすいプログラミング言語を探したり、クラウド環境にサーバーを移して運用の手間を無くすなど、技術者が素早く動きやすい体制作りに注力している。

Profile of CIO
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・佐野陽光代表執行役からは、とにかく「それがベストなのか」と聞かれます。ベストかどうかの判断ポイントは「仕事をする人(私や担当者)がやりたがっているか」「その仕事で当社が一番になれるのか」「収益に結びつくのか」の3点。これについてきちんと説明できるかどうかを考えながら話すようにしています。この点を確認する文化は当社全体に浸透しています

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・(クラウド型サービスの)Amazon EC2を利用しています。稼働の安定感などいくつかの課題があり、直接要望を出すなどしています。ただ、課題を消化して使いこなしていくことも重要だと考えています

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・紙の新聞・雑誌はあまり読みませんが、iPad(アイパッド)で産経新聞を時々見るようになりました

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
・TechCrunch
・はてなブックマーク
・Googleニュースなど

◆最近読んだお薦めの本
・『小さなチーム、大きな仕事』(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン著、ハヤカワ新書)
ここに書いてある仕事の進め方は私の考え方やクックパッドの仕事の進め方に近く、共感しました。

◆ストレス解消法
・阿波踊り。今も猛練習中で筋肉痛になっています。

■変更履歴
第4段落で「佐藤氏が技術を担当する前は」とあったのは橋本氏の誤りでした。また、「たべみる」の開発に「ColdFusion」は無関係でした。お詫びして修正いたします。本文は修正済みです。 [2010/07/06 16:10]