「tWakeUpCallMaker」(タオソフトウェアが開発)は、「目覚まし時計」を作成するAndroidアプリである──こう説明するだけでは、このアプリがAndroid Application Award(A3) 2010 Springの大賞を受賞した理由が伝わらない。このアプリが高く評価された理由は「Androidアプリを作るAndroidアプリ」という仕組みを実現したことにある。「アプリを作って他の人に送ることができる。これはiPhoneにはできないこと。この仕掛け自体が高く評価された」(審査員長の丸山不二夫氏)。

自分で録音した音や声、音楽ファイルを目覚まし音に
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「めざまし時計作成」ボタンでアプリを生成
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作成したアプリはメールで友達に送ることができる
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出来上がったアプリでは自分のニックネームが作者名になる
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 目覚まし時計を作る方法はごくシンプルだ。自分のニックネームと、好みの目覚ましサウンドを指定して、「目覚まし時計アプリ」を作成する。作成したアプリは、自分で使うだけでなく、贈り物としてメールに添付して送信することができる。

 その基盤には、先に説明したように「Androidアプリが、Androidアプリを生成する」仕掛けがある。開発の経緯も、まず「そのようことが可能だろうか」との試みから始まり、その後に「目覚まし時計を作って配る」というアイデアが生まれた。

 作成したアプリがAndroid端末上で正常にインストールできるかどうかなど、開発過程では多くの試行錯誤があったという。開発元のタオソフトウェア 代表取締役の谷口岳氏は、受賞式の場で「大賞の受賞はまったく予想していなかったが、狙いを理解してもらえて嬉しい」と語った。

 審査員長の丸山不二夫氏は「すでに有名な作品、完成していると思われる作品よりも、新しい試み、若い世代に賞をあげよう、という気持ちで選考した」と語る。

 これまで見てきたように、大賞をはじめとする数々のA3受賞作品は、豊富なアイデアが詰め込まれている。その一方で完成度を高める余地もあるように見えるものもある。一方、世に出ているAndroidアプリの中には、すでに高い完成度を持っている作品も多い。こうした多様性と「伸びしろ」は、Androidというプラットフォームの魅力とも通じるものがある。次回のA3では、また豊かなアイデアに接することができることを期待したい。

作者に聞く
タオソフトウェア 代表取締役 谷口岳氏
「tWakeUpCallMaker」開発チーム(山田靖二氏、境原氏、谷口岳氏)と、審査員長を務めた日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏(右)[撮影:菊池くらげ]
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アプリ開発のきっかけは。

 Android上でAndroidアプリが作成できるか?できたら面白いかも?との思いつきだけで作成しました。

開発にあたって苦心された点は。

 一般的なプログラムではないので、関連情報もなく、Android OSのソースコードを読んだり、バイナリエディタを使ったりして実現方法を調べました。最終的に実現できましたが、OSのバージョンに依存しますし、開発時間もかかりすぎてしまいました。

ユーザーへのメッセージを。

 アプリケーションを作成して楽しむことに焦点を当て、tWakeUpCallMakerは、Web上でAndroidアプリケーションを作れるサービス「ドロクリ」(関連記事)へと進化しました。ドロクリで自分の作成したアプリが、自分の携帯で動く喜びを感じていただけたらと思っております。