「Twitter小説」をご存知だろうか。Twitterのツイートの文字数制限(140文字まで、実際にはハッシュタグ分を除き131文字)の中で小説を書くという試みである。#twnovel ハッシュタグのもと、プロの作家も参加しつつ、Twitter上で日々書き継がれている。「Twitter小説集 140字の物語」として書籍化もされた。

 この「つぶやき文庫」は、Twitter小説を写真と共に表示するアプリである。意表を突くTwitter小説が表れ、一定の時間が経過するか、あるいは指で画面に触れると文字が飛び散っていく。同時に表示する写真は、Twitter小説の内容から形態素解析によりキーワードを抽出し、写真共有サイト「フォト蔵」に公開されている写真を検索して表示している。

Twitter小説をフォト蔵の写真とともに表示
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指で画面に触れると、文字が飛び散る
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 画面を流れていくTwitter小説は、おそらく2度と同じ画面では表示されないのだろう。そんなことを考えながらアプリを眺めていると、不思議とリラックスできる。「環境音楽」という言葉があるが、この「つぶやき文庫」はいわば「環境小説」、あるいは「アンビエント・ショートショート」と呼べるのではないだろうか。一種のメディア・アートとして鑑賞できる。

 インターネットの上で日々書かれていく物語との「一期一会」の出会いを、いつも持ち歩くスマートフォンの画面上で楽しむことができる。そんなおしゃれなアプリだ。

作者に聞く
高橋憲一氏
高橋憲一氏[撮影:菊池くらげ]
高橋憲一氏[撮影:菊池くらげ]
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アプリ開発のきっかけは。

 「つぶやき文庫」は、私が開発したAndroidアプリケーションとしては5つ目になるのですが、アイディア自体は以前から温めていました。「Twitterクライアントは多数あるが、Twitter独特の“情報が錯綜する感覚”を表現するものができないか」と考えたのがきっかけです。

 アイディアを煮詰めていく過程でA3 2010 Springへの応募を決め、「見た目に美しく、それでいて単純なもの」にしようと思いました。

開発にあたって苦心した点は。

 「おしゃれ」に見えるアプリを目指したので、そのためのチューニングがかなり大変でした。文章の見え方・動作は複数のパターンを作って、自分なりに気持ちよく見えるよう追い込んで作っています。

 また、個人でかつサンデープログラマという立場なので、限られた時間の中でどこまで作り込めるか、が課題でした。コンテストに間に合わせるという制約もあり、ソフトウエアの品質面ではまだまだ改良の余地はあると思っています(私自身が、国内のソフトベンダーのなかでも、かなり品質にこだわりのある会社で営業を担当しているため、実はそこが一番気になっています)。

ユーザーへのメッセージを。

 「つぶやき文庫」は実用に役立つアプリではありません。しかし、素晴らしい文章をTwitterに投稿したり、美しい写真をネットで公開したりされている多くの方々の力をお借りして、ふとしたときに起動して「ほっとする」ことができるアプリになったと思います。あなたのAndroid端末の、メニューの片隅に置いていただければ幸いです。

 また、Androidマーケットには私のような個人開発者もたくさんいます。ぜひいろいろなアプリを試し、評価してください。それが開発者の励みとなり、ひいてはAndroid市場全体の盛り上がりにつながると思っています。