米マイクロソフトは2010年1月、「Windows Azure」の商用サービスを開始した。既に複数のベンダーがクラウド・サービスを提供しているなか、Windows Azureは後発となる。それでも最大手のOSベンダーによるクラウド・サービスということで、企業ユーザーの注目度は高い。

コンピュータ・リソースをシェア

 クラウドは、雲(cloud)型で表現されるインターネットを指す。そのクラウドを頭に付けたクラウド・サービスとは、インターネットでつながった大規模なデータ・センターにあるコンピュータ・リソースを、ユーザーが必要なときに必要なだけ利用できるようにしたサービスである(図1-1)。

図1-1●クラウド・サービスを利用するメリット<br>クラウド・サービスとは、広義の意味ではインターネットを通じてコンピュータ・リソースを提供するサービスを指す。クラウド・サービスを利用することで、システム管理者の負荷を軽減し、コスト削減につなげられるメリットがある。
図1-1●クラウド・サービスを利用するメリット
クラウド・サービスとは、広義の意味ではインターネットを通じてコンピュータ・リソースを提供するサービスを指す。クラウド・サービスを利用することで、システム管理者の負荷を軽減し、コスト削減につなげられるメリットがある。
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 広義の意味では、従来のインターネットVPNなどを介したホスティングオンライン・ストレージなどもクラウド・サービスといえる。ただ狭義では、データ・センター内のコンピュータを仮想化技術などを使って多くのユーザーで共有するものを指す。Windows Azureもこの形態のサービスだ。なお、インターネットではなく、閉域IP網などのネットワークを通じて提供されるサービスもクラウドと呼ぶことがある。

スケーリングなどが容易

 では、今なぜクラウド・サービス(以降、クラウド)が注目されるのか。それは、ユーザー自身がハードウエアを直接管理せず、ユーザーはサービスを使った分だけ料金を支払えばよい点にある。初期投資が少なくても始められ、不要になればすぐに止められるため、手軽に利用できて無駄を省けるからだ。

 より具体的にメリットを見てみよう。ここで挙げているものは、すべてWindows Azureにも当てはまる。

 まず、サービス提供者がハードウエアを管理するため、ハードウエアのライフ・サイクルを考えたり、保守料金を支払ったりする必要がない(図1-1の(1))。

 次に、スケーリングが容易だ(同(2)と(3))。スケーリングとは、サーバーの負荷に応じてシステムの処理性能を高めたり、低くしたりすること。前述したようにクラウドでは、膨大なコンピュータ・リソースをシェアする形を採っており、急激な負荷の高まりにもすぐに対応できる。

 また、大規模なデータ・センターで管理されるため、社内システムで導入すれば多大なコストがかかるシステムの冗長化や死活監視をサービス提供者が低価格で用意してくれる(同(4))。

 ネットワーク管理者の負荷も軽減できる(同(5))。社内システムなら、クライアントとサーバーとの接続を保守・管理しなければならない。クラウドなら、クライアントがインターネットにつながる環境だけを提供すればよい