iPhoneやiPadの大成功は米Appleの長年にわたるユーザーインタフェース(UI)研究の成果と言える。任天堂を除く日本メーカーはUI技術、特にUIのソフトウエアを軽視したため、機能は盛りだくさんだが使いにくいモバイル機器を作り続け、今や競争力を大幅に落としている。遅きに失したが、UIの重要性を再認識し、捲土重来(けんどちょうらい)を期すべきだ。

 この視点から、本書はプログラマはもとより、すべてのモバイル機器メーカーの方にお薦めしたい一冊である。タイトルは「ActionScript 3.0による~」となっているが、iPhoneやiPadのように“触っているだけで楽しいUI”の作成に役立つアイデアが詰まっている。しかも、実際に動くサンプルコード付きである。このような本は少ない。

 全編面白い。「ボロノイ図を利用した『点群の勢力範囲』の決定」「プレートを使った回転モーメントの表現」「メタボール理論を応用した液体表現」「画像の色情報を解析して配置する『フォトモザイク』」など、自分でもやってみたいと思わせるテーマを多数扱っている。書名の通り、コードはActionScriptだが、文法はJavaやJavaScriptに似ているので、Flashプログラマでなくても難なく読み進められるだろう。Flashのプログラミング環境がない方は、サンプルコードをJavaに変換して、Processing環境で試してみることをお勧めしたい。著者の古堅真彦氏は2004年度下期のIPA認定天才プログラマー/スーパークリエータ、国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]准教授。著者が開発したプログラミング言語「motionExpress」(http://www.motionexpress.net/)も必見だ。

ActionScript 3.0による数学・物理学表現[実践編]

ActionScript 3.0による数学・物理学表現[実践編]
古堅真彦著
ソフトバンククリエイティブ発行
3360円(税込)