ハンドメイド(手作り)の作品を作り手と買い手が直接売買できるサイト「Creema」が2010年6月にオープンした。口コミなどを中心に、出展数は約1カ月で200人、1000作品にまで増えたという。大手ネット事業者によるオークションサイトや、大手ブランド品のマーケティング関連サイトが先行する中で、なぜ今、ハンドメイド特化のサイトなのか。Creemaを運営する赤丸ホールディングスの丸林耕太郎社長に聞いた。(聞き手は志度 昌宏=ITpro

「Creema」とは、どのようなサイトか。

 手芸品や工芸品、音楽やアートなど、ハンドメイドの作品を売買するためのサイトだ。作品の作り手が自ら出展し、買い手とコミュニケーションしながらファン層を増やしていける仕組みを提供する。出品者はアマチュアでもプロでも構わないが、出品できるのは自身が作り上げたハンドメイド品に限定している。大量生産品や既製品に少々手を加えただけの作品ではだめだ。

 個人の作品あるいは所有物を売買する仕組みとしては、オークションサイトがある。こうしたオークションサイトの対象はチケットから不動産まで多種多様で、品物そのものの価値に値段を付けている。Creemaでは作者がもつ世界観を共有することで、新しいコミュニティを作りたい。

 例えば絵画などの世界では、作者が作品を展示し、来場者と直接語ることでファン層を広げる「個展」という仕組みがある。Creemaは個展の集合体だと考えれば分かりやすいのではないだろうか。

 出品者は、出展料として月額328円と、売買成立時には成約額の5.25%をシステム利用料として支払う。購入者のCreemaへの登録・利用料は無料である。

ハンドメイド品を扱うサイトとしての工夫点は。

 作品の展示場なのだから、作品の色を殺さないようにサイトのデザインやユーザーインタフェースを作り上げている。シンプルに徹し、Creemaというサイトとしての主張は抑えてあるということだ。サイトを見てもらえれば一目瞭然だろう。

 ただ、出展者の中には無名の作者も少なくない。単に作品を並べるだけでは、購入者も迷ってしまうのではないだろうか。そこでCreemaからのお勧めとして、四つの作品を大きく表示し、その下に16作品をピックアップ表示している。作者を紹介する「ピックアップクリエイター」というコーナーもある。

 作者と購入者が意見交換できる機能も用意した。ハンドメイド品は基本一品ものなので、気に入った商品がもう売れてしまっている場合もある。そんなときに、作者と直接かけ合って「同じものはできないけれど、ご期待の商品を作ってみましょう」といった話に発展する例もある。加えて、作者に「どんな意図で作っているのか」などを直接聞ければ、作者や作品のイメージも変わってくる。

ハンドメイド品の市場は期待できるのか。

 もの余りや環境保護といった時代感を背景に、ハンドメイド、一品ものの市場は盛り上がりつつある。Creemaでも、500~1500円程度の商品はすぐに売れていく。既製品のセレクトショップよりも購入率は高いのではないだろうか。当社が得るシステム利用料などについては、1件当たりは少額だが成約率の高さでカバーできると考えている。

 世の中には、ものづくりをやっている人が大勢いる。優れた才能をもった人たちも少なくない。彼ら・彼女らが魂を込めて作り上げた作品を、より多くの人に知らせることで、隠れた才能が認められるようになれば、作った人はもちろん、その作者や作品に共鳴した人たちも活力を得られるはずだ。