日本をはじめ米国など世界5カ国で販売が始まった「iPhone 4」。販売台数が発売後3日間で170万台を超え、従来モデルの記録を大きく上回ったなどと話題になっているが、このiPhone 4や同社のタブレット端末「iPad」への旺盛な需要が続くことで、各業界でトップシェアを誇る企業に大きな影響を及ぼすと欧米のメディアが伝えている。

iPhoneの買い換えサイクル、ライバル端末よりも半年早く

 米Internet.comによると、米国の投資銀行OppenheimerのアナリストYair Reiner氏が、Appleの店舗に並んだ人になぜiPhone 4を購入するのか聞いたところ、「買い換えの必要に迫られて」と応えた人はわずか26%。74%が「iPhoneの新モデルを早く欲しかったから」と答えたという。またそう回答した人うちの76%がiPhoneを既に所有していたという。

 そうした人たちの買い換えサイクルは平均14.7カ月で、ほかのスマートフォンの平均買い換えサイクルである21カ月よりも大幅に短いことも分かった。

 またiPhoneの代替端末として考えられるものを挙げてもらったところ、米Googleが開発を主導する「Android OS」を搭載するスマートフォンと答えた人が58%で最も多かった。Reiner氏は1年前にも同じ調査を行っているが、その時はカナダResearch In Motion(RIM)の「BlackBerry」端末を挙げる人が最も多かった。RIMは今年29%に転落したという。

 Androidがその勢いを増していることは、多くの業界関係者が既に認めていることだが、このRIMとAndroidの順位逆転は、AppleとGoogleの緊張関係が今後さらに増していくことを意味すると記事は指摘している。

 新製品のiPhone 4を巡っては、ディスプレイに黄色いシミのようなものが現れることや、端末側面のアンテナが組み込まれている金属部分を直接握ると受信状態が悪化するといった問題が取りざたされている。しかしこうした問題はあるものの消費者の購買意欲は高まっており、iPhone 4の出足はおおむね順調。AppleのSteve Jobs最高経営責任者(CEO)を喜ばせているようだと記事は伝えている。

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米国でシェアトップのBlackBerryにも危機到来

 こうした中、iPhone 4の成功はライバル企業に暗い影を投げかけている。このことは、先日発表されたRIMの決算に堅調に表れた。RIMの2011会計年度第1四半期(2010年3~5月)の売上高は42億4000万ドルとなり、前年同期から24%増加した。一見好調のように見えるが、これは同社が先に発表していた事前予測値(42億5000万~44億5000万ドル)を下回っている。またアナリストが予想していた43億5000万ドルにも届かなかった。このことからRIMがiPhoneに対抗できる力を失いかけているのではないかとメディア各紙は伝えている。

 米国のスマートフォン市場の最新のシェアでは、トップがRIMのBlackBerryで35%、次いでiPhoneの28%となっている。しかし、BlackBerryのシェアは前期から2ポイント縮小しているのに対しiPhoneは2ポイント拡大しいる。これまでBlackBerryはiPhoneの影響をあまり受けないと考えられ、RIMはトップの座を謳歌してきた。しかしここに来て安閑とはしていられない状況になってきた。

 「かつて米国のビジネスユーザーを中心にしたコミュニティーでは、スマートフォンと言えばBlackBerryを意味していた。しかし今のRIMは、iPhoneやAndroid端末とのし烈な競争に直面し、その貴重なシェアは奪われている」。Internet.comの別の記事はそう報じている。

 米Bloombergによると、RIMはフルキーボード付きのスマートフォンで知られるメーカーだが、消費者に人気のあるタッチスクリーン端末の分野で後れを取っており、iPhoneや米Motorolaの「Droid」に対抗できる製品の開発で苦戦している。

 RIMのJim Balsillie共同最高経営責任者(CEO)は決算発表の電話会議で6~8月期の終わりか、9~11月期の始めに二つの新製品を投入するとし、「業績予想に重要な影響を与えることになる高価格帯の製品」と説明した。

 また同氏はBlackBerry OSの最新版「BlackBerry OS 6」のリリース時期が9月の下旬になることも明らかにしたが、二つの新製品がこの最新OSを搭載するかについては言及を避けた。同氏は、「我々の計画がどのようになるか進展を見守ってほしい」とだけ語ったという。RIMがタッチスクリーン搭載の新製品をリリースするとアナリストらは見ていると記事は伝えているが、詳細については不明だ。

 米Wall Street Journalによると、BlackBerryの平均単価は1年前の357ドルから300ドルへと下がっている。これはRIMが低価格端末の製品を投入したことに加え、高価格端末の開発で他社に遅れをとっているのが要因だと報じている。「低価格端末の投入でより多くの顧客を獲得できる大衆市場への参入を果たして喜んでいる同社だが、iPhone 4のような、より高機能端末の開発では遅れを取っている」と、この記事も論調はBloombergの記事とおおむね同じだ。

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