企業での仕事だけでなく、生活のあらゆるシーンにIT(情報技術)が入り込んでいる今日、データ分析によって、個人の行動はもちろん、本人が気づいていない嗜好までも明らかにできるようになった。『ビジネスウイーク』誌の記者で現在はフリーのジャーナリストとして活躍する著者は、米国でこうしたデータ分析の「巨人」が、企業などの組織で何をしているのかを明らかにしていく。ビジネスやショッピングはもとより、政治や医療、結婚ビジネスまで、彼らの活動分野は幅広い。

 「巨人」の1人である大学教授は、メールの送受信記録を分析して、人間同士のつながりを定量的に表すことに取り組んでいる。2001年に経営破たんしたエンロンでは、複数の部門にまたがる集団が1日1000件以上のメールを発信し、会社の危機についてのうわさを発信すると同時に、社員同士が転職活動をすることも手助けしていた。

 ブログ分析を専門とする「巨人」は、様々な手がかりから匿名のブロガーの年齢や性別などのプロフィールを浮かび上がらせ、行動や嗜好とマッチングさせてマーケティングに活用する。自分の情報も知らぬ間に分析されていると思うと、ちょっと背筋が寒くなる。

数字で世界を操る巨人たち

数字で世界を操る巨人たち
スティーヴン・ベイカー著
伊藤 文英訳
武田ランダムハウスジャパン社発行
1890円(税込)