企業の人事組織論をサッカーになぞらえて語る識者は多い。一人ひとりの選手が自己裁量で動く範囲が野球などに比べて広く、常に相手に邪魔されるのでプレーにミスは多く、不透明な判定やペナルティーなどで試合運びに不確定要素が多いことなどがそのゆえんだろう。序文を寄せたジェフユナイテッド市原・千葉の元ゼネラルマネージャー、祖母井秀隆氏によれば、著者はドイツで有名な経営コンサルタントにして、スポーツ学関連の論文で受賞歴がある熱烈なサッカーファンだという。さすがに43の論点には既視感のあるものが皆無とはいえまいが、サッカーの好きな人ならば、改めてそれらも新鮮に考え直す機会となり、脳に染み通るはずだ。

勝利を求めず勝利する

勝利を求めず勝利する
ラインハルト・K・スプレンガー著
稲吉 明子訳
英治出版発行
1680円(税込)