経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、アプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。日立製作所が主張する基盤像を紹介する。(ITpro)

コスト削減と競争力強化が同時に求められる時代に

 現在稼働している情報システムは、種々の課題を抱えている。それは、経営ニーズに応える側面からテクノロジーの側面まで多岐に渡る。なかでも、新規投資が減少する昨今の経営環境においては、IT投資コストの削減が、情報システムに対する経営ニーズの第一に挙がっていると認識している。

 投資コストを削減するためには、初期導入コストの削減だけでなくランニングコストの削減が重要である。ランニングコストの削減に向けては、様々な取り組みが必要ではあるが、特に運用管理の効率化によって運用管理コストを低減することが有効だ。

 コスト削減ニーズが高い一方で、従来以上に業務効率の向上や競争力の強化への貢献が同時に求められている。例えば、見積り作成や在庫確認など、人と情報システムの間で、相互のやり取りが多い定型業務では、システムの操作性が業務効率向上にとって重要だ。期末集計処理や給与計算など、システムの処理能力に依存する業務では、情報システムのさらなる高速化による処理時間短縮が業務効率向上につながる。

 既存の定型業務を強化する一方、事業の継続的発展のためには業務プロセスの改善や新規事業の立ち上げなど、新たな展開が不可欠だ。競争力の強化を図る取り組みへの情報システムの適用も重要である。

 具体的には、業務プロセスの改善においては、現状把握と課題共有が第一歩だ。現場レベルでの情報共有や、経営層・幹部層に向けた経営情報の可視化(レポーティング、BI:ビジネスインテリジェンス)環境が必要になる。業務プロセス改善に際しては、情報システムにプロセスを実装する際の遅延が障害になってはならない。すなわち、情報システムの変更・更新の迅速性が求められる。

 業務と情報システムが表裏一体となっている現在、新規事業立ち上げでの機会損失を最小化するためにも、経営判断に沿った情報システム構築の迅速性が必要なのだ。

仮想化技術により投資コストを最適化

 これらの経営ニーズに応えるため、情報システムでは次のような技術的な取り組みが進んできた。

 まず、投資コストの最適化に向けては、サーバーやストレージなどの仮想化統合による台数や容量の最適化が進められた。既存の情報システム資産を仮想化環境に移行する場合は、現状を踏まえた移行計画を立案し具体化を図ることになる。

 その際、各種の仮想化技術が混在することが起きる。そのような環境においても、物理層と論理層をひも付けて一体的に統一ビューで管理することが重要である。業務が必要とするだけのリソースを最適に割り当てることが、運用保守業務の効率向上、すなわちランニングコストの最適化・削減にもつながるからだ。仮想化技術と運用管理技術を組合せて適用する。

業務効率向上には、大量データ処理、可視化など新技術が必要

 業務効率向上に向けては、ユーザー視点、業務視点に立ったさらなる性能・機能の向上を図る必要がある。利用者の作業行動分析に基づいた洗練されたユーザーインタフェースや、大規模なバッチ処理向けに高速な実行基盤が利用できる。

 特に今後は、細粒度で桁違いに大量なトラフィック情報を扱うための革新的技術の確立・普及が期待される。そこでは、大規模なリソースを要求に応じて利用する処理を円滑に運用するために、必要な時に柔軟にリソースを割り当てられる仕組みが求められる。

 また、競争力の強化に向けては、情報共有の促進や情報の可視化などの業務を支える新たな情報インフラが必要になる。業務情報にとどまらず、大量に発生するリアルタイム情報を効率よく収集・蓄積し、必要に応じて柔軟に活用できる技術を組み合わせて実現する。個別システムとしてではなく、既存の情報システムに柔軟に配備されシームレスに活用できることが重要だ。

 迅速な情報システムの導入・構築および柔軟な変更・更新のためには、オンデマンドでの情報システム利用を可能にする、柔軟な構築基盤の準備が必要だ。