NTTドコモが経済産業省の「情報大航海プロジェクト」を通じて取り組んだ「マイ・ライフ・アシスト」は、「空気を読める携帯電話」というキャッチフレーズに基づいてスタートした。2008年のプロジェクト発足当時、「KY」(空気読めない)という言葉が流行していたこともあって、それなら逆に空気を読める携帯電話を作り、実生活(リアルライフ)を充実させようという発想だった。



写真1●NTTドコモ 法人事業部モバイルデザイン推進室 担当部長の佐藤一夫氏
写真1●NTTドコモ 法人事業部モバイルデザイン推進室 担当部長の佐藤一夫氏
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 マイ・ライフ・アシストの基本コンセプトは、検索サイトで入力したキーワードやアクセスしたページといったネット上での行動情報だけでなく、リアルな世界のいろいろな情報までいったん預って、それぞれをマッチングさせることである。

 最近はガラパゴスという形容詞が付くことが多いが、日本の携帯電話は、極めて高機能化が進んでいる。あの小さなデバイスに、通話に使うスピーカーやマイク、カメラはもちろん、GPS(全地球測位システム)、非接触型ICチップ、加速度センサーといった様々な仕組みが搭載されている。加速度センサーとしては振るだけでは歩いたと認識せず、きちんと歩かなければ万歩計が進まないというセンサーも入っている。

 しかも、こうした高機能な携帯電話を多くのユーザーがいつも持ち歩いている。携帯電話はライフログを収集するための、これ以上ないセンサーになっているわけだ。

 この携帯電話を通して集めた情報を分析すると、ネットの利用履歴だけでなく、リアルな世界での行動についてもいろいろなことが分かってくる。

図1●サービスイメージ
図1●サービスイメージ
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 このネットの履歴とリアルの履歴を合わせて分析すれば、ユーザーの行動を予測し、先回りして次の行動や購入する商品やサービスをレコメンドできる。それが空気が読めるサービスである(図1)。

 イメージとしては、いつも帰りが遅いサラリーマンがたまに早く帰宅しようとしていたら、「奥さんに花でもいかがでしょうか」と勧めるといった具合。さらに今後のチャレンジとして、潜在ニーズを予測して、気付きやサプライズまでを演出できないかと考えている。

 また、ユーザーの動線に合わせた情報を収集することで、動線に応じたサービスも可能になる。携帯電話だけでなく、交通ICカードと連携させることで、鉄道やバスの乗降情報を含めて動線を把握できる。自動車、つまりカーナビゲーションシステムとの連携も考えられる。このように、横の広がりを持った形で情報を解析すれば、より精度の高いレコメンドサービスを実現できる。

 もう一つの考え方として、1次解析したデータを匿名化して外部に提供することも検討している。1次解析した結果を流通させるわけだ。属性情報や匿名化情報という形で提供することによって、サービスプロバイダーは、個人情報を管理することなく属性サービスや匿名サービスを実現できる。こうしたニーズを持つプロバイダーは決して少なくない。例えば統計情報で人の動線が分かって、かつ、その動線上にいろいろな思考や特性を重ねれば、マーケティング情報に生かせる。大規模な人の移動を把握し、公共サービスなどに生かすこともできる。

 マイ・ライフ・アシストでは、こうした二つの側面で、サービスを考えてきた。以下、2007年度からの3年にわたるプロジェクトの取り組みを、年度のテーマごとに紹介する。