この記事では、サービスマネジメントに求められる機能を取り込んだソリューションを参考に、そこで重要となるテクノロジーを解説します。

 前回の記事で紹介しているように、クラウドのサービスマネジメントでは次の三つの機能が重要です。

●セルフサービスポータル
●プロビジョニングシステム
●リソースのメータリングとレポーティング

 前回「セルフサービスポータル」を説明しましたので、残りを説明します。

プロビジョニングシステム

 CPUやメモリー、ストレージ、ネットワークなどITリソースを有効に利用するための技術として仮想化が誕生しました。ハードウエアを統合してコスト削減効果を期待したものですが、クラウドコンピューティングでも標準化/自動化されたサービスを迅速に提供するために、必須の基盤技術となっています。

 仮想化が整備された環境をベースとして、クラウド環境を提供するサービスマネジメントシステムをどのように標準化/自動化していけばよいのでしょうか。重要なのが「プロビジョニング」です。

 クラウド環境におけるプロビジョニングとは、必要となるITリソースの組み合わせをリソースプールから選択し、必要となる設定処理をタスクという単位で連携させ、リクエストされたサービス環境を自動的にセットアップする仕組みです。

 仮想化の中心となっているのは、物理層とゲスト環境の間に位置する、一般にハイパーバイザーと呼ばれる機能です。VMwareのほか Xen、KVM、Hyper-V、PowerVM(IBM AIX)など、さまざまな製品が提供されています。

 クラウド環境でのプロビジョニングでは、ハイパーバイザーを中核に全体を制御します。標準化されたサービスを自動化して提供するには、プロビジョニングを行うマネジャー(管理サーバー)に少なくとも以下のような機能が求められます。

・仮想化環境に関する構成情報の収集・管理機能
・ハイパーバイザー(仮想化環境)をメインとしたリモート実行指示
・仮想サーバーに対するリモート設定機能

 プロビジョニングは、基本的に管理サーバー側からのリモート指示になります。ただし、一般のOSが稼働するサーバー環境とは異なり、ハイパーバイザーや稼働前のサーバーテンプレートなどには、エージェントを呼ばれる市販の管理用プログラムを導入できません。このため、標準機能としてリモートから操作できる仕掛けを事前に組み込んでおく必要があります。言い換えると、これがプロビジョニングを行うための前提条件となります。

 リモートから各ITリソースにコマンドを発行する代表的な機能は「SSH (Secure Shell)」です。SSHはセキュアにリモート対象上でコマンドを実行させることができる仕組みです。現在ではほとんどのOSで利用可能となっています。認証機構の改善や暗号化処理も実施されるため、比較的高い安全性が確保できます。

 また、ハイパーバイザーを管理している制御サーバーも、コマンドインタフェース(CLI)やAPIを提供しているので、コマンド実行でほとんどの設定を実施できるようになってきています。SSH以外には、SMB(Server Message Block:Windowsネットワークにおけるファイル共有サービス用のプロトコル)、SNMPなど、対象機器によって利用するプロトコルは変わります。

 プロビジョニングでは、リモートコマンド処理(タスク)を連続させたワークフローを実行します。これを「プロビジョニングタスク」と呼びます。ジョブ管理ツールに似ていますが、基本的にエージェントを利用せず、イベントドリブンで標準化されたリクエストを自動処理する点が異なります。