仮想化の対象は、サーバーからクライアントへ広がりつつある。デスクトップ環境やアプリケーションの仮想化を通じて、運用コストの削減、ユーザーの利便性アップなどを狙う。ただし、クライアント仮想化には様々なアプローチがあり、ベンダーによって取り組みは様々だ。ここでは主要5ベンダーのテクノロジーを見ながら、クライアント仮想化技術の「現在」を探っていきたい。第1回はヴイエムウェアのクライアント仮想化技術を取り上げる(編集部)

橋本 洋 ヴイエムウェア

 ビジネスの多様化に伴いコンピューティング環境が複雑化していく中、ユーザー端末およびOS、アプリケーションもますます多様化し、クライアントPCへのマスターイメージの展開、運用管理や故障対応など、その管理はIT管理者にとって、時間とコストのかかる大変困難な作業となっている。

 一方、エンドユーザーのニーズとしては、場所や使用端末を選ばないタイムリーな情報へのアクセスといった、新しいワークスタイルへの迅速な対応が求められている。異なる端末を使用する場合でも、ユーザーは日ごろ使い慣れた、自分専用にカスタマイズされたデスクトップの操作性を要求する。

 このように今日のデスクトップ環境には、運用負荷やコストを抑えつつITの課題とユーザーのニーズを同時に満たす、柔軟性に富んだデスクトップ管理ソリューションが求められている。

 情報システムを運営する上で、ユーザーの生産性を損なわずに、クライアントPCの情報漏えい対策、運用管理の効率化、そしてコスト削減を実現することは大きな課題だ。そしてこれらの課題に対する効果的な方法は、クライアントPCをセンターに集中化して管理することだといわれ続けている。

 米VMwareは、x86アーキテクチャを対象に、OSとハードウエアの依存関係を解消し、インフラストラクチャの柔軟性を向上させることを目的として製品を提供してきた。そして現在は仮想化により柔軟になったインフラストラクチャのさらなる進化を目指している。

 例えば「VMware vSphere」による仮想化基盤が普及するにつれ、サーバーだけではなくデスクトップも同一基盤上で実行、集中化されるようになった。

 クライアントPCのセンター集中化により、ユーザーは企業内のさまざまな端末から等しい操作性、パフォーマンスでユーザー専用にカスタマイズされたデスクトップを起動できるようになる。また管理者にとっては、データセンター内でデスクトップを統合することで、運用管理、障害対応の効率化、そしてITガバナンスの強化を実現できる。

 クライアントPCのセンター集中化にはさまざまな方法があるが、ここ数年で利用が増えてきた手法が、仮想デスクトップ方式である。仮想化技術を利用することで、既存のアプリケーションやデスクトップ環境をそのまま利用しながら、管理の一元化、情報漏えい保護、リソースの有効活用などを実現できる。

 VMwareでは仮想デスクトップ方式を実現する製品群を総称して「VMware View」と呼ぶ。従来「VDI(Virtuial Desktop Infrastructure)」と呼んでいた仮想デスクトップ基盤をベースとし、データセンターのデスクトップ運用管理を効率化するためのさまざまな機能拡張を行ってきた。

 VMware Viewは主に、「統合アクセス」「オフラインデスクトップ」「View Manager」「ThinApp」「View Composer」──といったコンポーネントで構成される(図1)。これらのコンポーネントを組み合わせることで、ユーザーはロケーションや端末に縛られずに必要なときに必要なアプリケーションを安全かつタイムリーに利用できるようになるのである。

図1●VMware Viewの主要コンポーネント
図1●VMware Viewの主要コンポーネント
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 以下では、運用管理を効率化するVMware Viewの主なコンポーネントについて、運用管理およびエンドユーザーの利便性という二つの視点から、特徴やメリットを解説していく。