PC環境を仮想化してサーバーに集約することだけがクライアント仮想化ではない。クライアント仮想化に特有の課題を解決しつつ、デスクトップやクライアント・アプリケーションの仮想化を総合的に検討する必要がある。クライアント仮想化の最新技術を探る本特集の第2回は、シトリックス・システムズに焦点を当てる(編集部)

北瀬 公彦 シトリックス・システムズ・ジャパン

 シトリックス・システムズでは、OS(ディスクイメージ)、アプリケーション、ユーザー・プロファイルといったユーザーのPC環境をサーバー側で集中管理し、オンデマンドにデスクトップ環境を構築し、ユーザーに最も適した方法で、高品位なユーザーエクスペリエンスを実現しながら提供するソリューションを「デスクトップ仮想化」と呼んでいる。

 仮想化というとサーバー仮想化、つまりサーバーを仮想マシンに移行し、サーバー統合のために使われることが多かった。例えばWebサーバーやDBサーバーを仮想化するのはその一例だ。一般的にサーバーにはそれぞれ決まったアプリケーションがインストールされていて、その用途ははっきりしている。また、ユーザー・インタフェースは不要な場合が多い。

 一方ユーザーのPC環境では、ユーザーはさまざまなユーザー・インタフェースからさまざまなアプリケーションを使用する。Microsoft Officeやブラウザなどは最も使われるアプリケーションの一つである。このようなユーザーのPC環境を仮想化するデスクトップ仮想化では、サーバー仮想化とは異なる技術が必要になる。

 一つの仮想ソフトウエアで動作する仮想マシンの数も多くなる。例えば、1000ユーザーのPC環境を仮想化しようとすれば、単純に考えて1000仮想マシンを準備する必要があるので、必要なストレージも膨大になる。加えて、ボトルネックになりやすいファイルI/OやネットワークI/Oを減らすために、なるべく仮想マシンにはアプリケーションをインストールせず、アプリケーション仮想化と一緒に利用することが望ましい。ディスク容量の削減には、マスターディスクをイメージ化し、ネットワークストレージから、OSの入ったディスクイメージを配信するといった構成が有効である。

 シトリックスの「XenDesktop」は、アプリケーション、デスクトップ、サーバーを仮想化し、データセンター側で集中管理してエンドユーザーにオンデマンドで展開できるようにする。ITの運用や保守の負荷を軽減すると同時に、「FlexCastテクノロジ」により、ユーザーが、どこにいても、どのような端末を使用していても、ユーザーごとに最適なデスクトップ、アプリケーションを提供できる。また、「HDX(High Definition eXperience)テクノロジ」により、ローカルPCと同等かそれ以上に高品位なユーザーエクスペリエンスを提供する。ここでは、そのXenDesktopを構成するコンポーネントと、これら二つのテクノロジについて解説する。