写真1●iPadの試験導入を決めたみずほ銀行
写真1●iPadの試験導入を決めたみずほ銀行
7月から東京都内の数店舗に導入し、店頭での商品説明などに利用する

 日本でも5月末に販売が始まった米アップルの「iPad」を、いち早く業務に活用する企業が登場している。みずほ銀行が7月から、営業店での顧客対応に試験導入することを決定(写真1)。三菱東京UFJ銀行の情報システム子会社も、社内での情報共有端末として試用を開始した。通信環境の充実も手伝って、企業利用がさらに拡大しそうだ。

 各社がiPad活用に乗り出したのは、ノートパソコンやスマートフォンにはない、iPadならではの特徴に注目したからだ。画面を指でタッチする直感的な操作性、9.7インチと比較的大きな液晶画面による表現力の高さ、そして最大730グラムと軽量かつ薄い本体による持ち運びやすさである。

 みずほ銀行は、これらの特徴を持つiPadを、対顧客サービス向上の切り札と期待する。「金融商品の説明のために、いちいち店舗の奥へ戻らず、その場で様々な説明ができる。顧客にストレスをかけないで済むし、行員も情報の引き出しが多くなる」。

 iPadの用途は、営業店の店頭における接客業務だ。窓口の行員が投資信託や外貨預金といった金融商品の内容を説明したり、顧客ごとの資産運用状況を見せたりする。iPadを手に持ったまま長時間使い続けるのは厳しいものの、「一般的なノートパソコンよりはるかに薄くて軽いので、持ち運びは苦にならない」(みずほ銀行)。

 みずほ銀行のほかにも、店頭での接客が多い流通業やサービス業に、iPad導入が広がり始めている。アパレル大手のニューヨーカーは、埼玉県越谷市のショッピングセンター内にある店舗に、iPadを導入。顧客が画面上で服の組み合わせを確認したり、店頭にない商品の在庫を検索したりできるようにした。

 中古車販売大手のガリバーインターナショナルも、東京・自由が丘にある旗艦店でiPadを試す。まずは中古車の商品画像を検索・閲覧する用途などを想定。「表現力はノートパソコンと比べ物にならないほど高い。画面や画像を拡大・縮小する操作性も抜群。対面の相手に説明をする最高のツールだ。顧客の反応を見ながら、活用方法を検討したい」(経営企画室の椛田泰行氏)。

 操作性や持ち運びやすさを評価して、社内の業務端末として使う動きも出てきた。三菱東京UFJ銀行の情報システム子会社である三菱UFJインフォメーションテクノロジーは、主に社内ポータルなどの情報系システムを使うための端末として、iPadを使い始めた。シトリックス・システムズのシンクライアントソフトを導入。無線LANで社内システムに接続し、文書共有や社内ポータル閲覧などに活用する(写真2)。

写真2●三菱UFJインフォメーションテクノロジーにおけるiPad活用例
写真2●三菱UFJインフォメーションテクノロジーにおけるiPad活用例
シトリックスのシンクライアントソフトを使って、iPadから社内のグループウエアを利用する

 「数人で画面を見ながら議論したり、社内で持ち歩いて必要な情報をすぐさま取り出したりと、情報共有のシーンを大きく広げられる」。千貫素成ITプロデュース部 部長は、iPadをこう評価する。社員が自席のパソコンで作った会議用資料を、iPadを使って会議メンバー全員が閲覧する。会議中にも手元のiPadを操作して、資料をメンバーが共同で編集する。まず同社内で使い勝手や効果を検証し、順次グループ各社に提案していく。