2010年5月21日
先週の水曜日に新体制になって初めての全体会議を開きました。この会議では現在までの状況説明と今後の方針について、ほぼ全員の職員の皆さんに私から直接話をしました。
まず事務局からの報告で、平成21年度の会計は約3500万円程度の黒字で、借金の返済が年間2000万円くらいありますから、それを差し引いても残る程度と分かりました。
もちろん、医師の給与は他の施設の半分くらいで、職員の昇給やボーナスを払わないでこの数値ですから、実際にはトントンくらいです。
また新年度になり、常勤医師1人で非常勤医師5人体制でのこの1カ月間の収支は、収入が100万円くらい減り、支出が350万円くらい減ったので、実際の収入としては増えています。
職員数が10人くらい減って適正化したことや不採算の機能を縮小したので当然と言えば当然なのですが、地元の変なマスコミ報道等ではつぶれるなどと無責任なことを言っていましたが、普通に考えますと破綻した以前のやり方を続けた方がつぶれる可能性が高いと思います。
職員の皆さんにはまず今までの混乱についてこんな風に説明しました。
夕張医療センターは以前メニューの多いレストランで、人も多く赤字でつぶれました。
そこで私はラーメン1本で勝負しようとレストランの建物を借りて「ラーメン屋夕張屋」を始めて、出前も始めました。
しかし一部の人たちが、「夕張の住民は昔から蕎麦屋を望んでいる!」とか言い出して、店で勝手に蕎麦屋を始めようとしました。
彼らは「住民が望んでいるから」「料理人としての義務だ」などとへ理屈を言いながら自分たちではリスクを負うことはなく、自分たちで開業することも無く反抗して結局出て行きました。
また大家さんは「ギョーザを出せ、チャーハンも出せ」と、雨漏りのする欠陥だらけの店舗を貸し出しながら不採算な要求をしていました。
やっと最近になり、会社の方針に合わない人たちが辞めて、出前を頑張るラーメン屋になって、夕張だけに通用する常識ではなく、全国的に通用するその方針に従ってやっていくことになりました。
といった話です。
そこで以下のような方針を示しました。
(1)在宅支援診療所として運営するので、優先順位を
在宅 > 老建 > 外来 > 病棟 > 救急
としてやっていく。
(2)法人の方針に沿わないで勝手に解釈してやろうとする人は辞めていただくか、会社としてペナルティーを科していく。反対に頑張った人を評価する。
(3)末端の声を直接理事会に反映させるため、1年交代で理事を3人選び、その人が責任を持って現場の声を理事会へ伝える。
(4)中間管理職の権限を無くし、法人の方針に従って末端に権限を委譲していくコーディネーターとする。
(5)夕張市との指定管理の部分と、自助努力による採算部門は会計をはっきり分けて運営し、自助努力の部分は職員に還元する。
(6)新たに会社を立ち上げて、医療法人ではできない支援の部分を充実させていく。
(7)学会活動を義務化し、各部門年1回は出るようにする。
(8)医師は人件費の問題もあり、しばらくは常勤医1人+非常勤医師で運営していくが、周囲の医療機関並みの給与を払う。
実はここを始めた時の基本方針と同じです。
ただ過去の破綻した総合病院のやり方にこだわり、勘違いした人たちが無責任に行動したので、やっと本来の方針に従って軌道修正できたといった感じです。
在宅療養はついに120軒に増えて、外来も3つの病院から支援を受けていますが、さらに他の病院から支援の話があり外来も充実してきました。
支える医療研究所の永森先生や橋本先生、延岡の森田先生が週末の当直の支援に来てくれています。
時間外受診や救急搬送も激減して、5月の連休中に救急車の出動はわずか3件となりました。
1人体制では大変そうですが、以前よりもとても働きやすくなった感じです。
考えてみますと他の開業医さんの診療所も1人体制ですし、ここが大きすぎただけの話です。
今後は管理や医療を中心にして利用者の居心地を悪くして職員を守ることより、いかに利用者の自由度を増やしていくか考えていくことにエネルギーを注ぐ予定です。
2010年5月28日
前回のメルマガでは、全体会議で新体制になっての今後の方針を職員に説明して、今後の運営は本来ここを始めたコンセプトに沿ったものにしていく、といったことを書かせていただきました。
箱の中で安全にケアする介護ではなく、地域の中で住民にも参加してもらってケアしていくようなイメージで考えています。
早速先日利用者を連れて花見に出かけていました。
雨が降っていて残念でしたが、利用者の皆さんはそれでもとても喜んで下さっていたそうです。パチンコ屋さんの関係者の方も話をすると「地元の高齢者のためなら喜んで協力します!」と快く引き受けて下さいました。
食べ物屋さんも、商店の方も反対する人も理由も無く、他の業種の方からも協力したいといった申し込みもありました。
むしろこの手の取り組みに一番反対するのは医療従事者なのだと思います。
たぶん、このような取り組みの中での医師の一番の仕事は家族や関係者に「私が責任を取ります」とか「私も参加しますから」と言って、職員が働きやすいようにすることなのだと思います。
高齢者が多い地域では、医療を充実させるよりも予防や福祉を充実させないと、高齢者の貴重な時間を無駄にしてしまいかねないと思います。
そして、本人よりも周囲(家族や医療従事者、怠慢な行政)の安心や満足のために福祉を医療に丸投げしたというのが、以前の夕張での高齢者対策だったと思います。
やろうとしていることは専門的でも難しいことでもなく、「高齢者が以前はできていたけど、高齢化してできなくなってしまった日常的なことを取り戻してもらう」ということです。
それが買い物だったり、外食だったり、花見や温泉、散歩、パチンコ等で「もしも何かあったら」と言い出すと何もできなくなってしまいます。
「高齢になれば何かあるのは当たり前」として、それを実現させるのが支える医療や福祉の仕事だと私には思えます。
年を取った時に都市部の大きな病院にいられたら本当に幸せなのでしょうか? 医療機関は生活の場ではなく、病気でしかたなくいる場所だとしか思えません。
そんなことは当たり前で納得もできるけど、実現するのが難しいというのがここでの高齢者福祉の一番の問題です。
波風立てないで以前のやり方を踏襲する、総論賛成、各論反対なのかもしれません。
以前に職員にイベントのアイデアを募集したのですが、ほぼ全員からアイデアが出てきていましたし、中には奇抜でユニークなものもたくさんありました。
自分たちが面白いと思うことは、利用者の方も楽しく感じられるものが多いと思います。そんなアイデアや想いが伝わり実現できる環境を作れなかったことを反省して、具体化していこうと考えています。
様々なイベントや取り組みが具体化していき、うちの職員の行動力に感心した1週間になりました。
今後もできない理由を並べる前に、どうしたらできるのかを考える人が多い会社にしていきたいと思います。
以前と体制は変わりましたが随分風通しが良くなり、楽しみが増えてきました。