1日200万人以上が訪問する動画共有サイト「ニコニコ動画」は、ドワンゴ傘下のニワンゴが提供する動画共有サイト(図1)。動画共有サイトは多数あるが、ニコニコ動画は、再生中の動画に対して視聴しているユーザーがコメントを入力できることで一線を画している。入力したコメントは、テレビ番組のテロップのように動画の画面上に表示される。ほかのユーザーがその動画を視聴したときにもそのコメントは表示される。
例えば動画のクライマックスシーンに表示されるコメントは、往々にしてそのシーンへのツッコミのようになっている。同じ時間帯に視聴していなくても、ユーザーは動画に表示されるコメントを見ることで、あたかも大勢でツッコミを入れているような一体感が得られるのである。
コメントが多く集まるということは、それだけユーザー数が多いことを意味する。第1回で説明したように、ニコニコ動画の1日の訪問者数は200万超。サーバーへの負荷も高い。
ここでは、ユーザーが一体感を得るための仕掛けである「動画に対してコメントを表示する仕組み」と、サーバーの負荷を軽減するために「人気動画に対するアクセスをどう分散させるか」について“解剖”していこう。
動画とコメントは別サーバーに保存
まずはニコニコ動画がコメントを表示する仕組みについて解説しよう。ニコニコ動画のシステムは「Webサーバーとその背後にあるデータベース」「動画サーバーとその背後にある動画投稿用サーバー」「コメントサーバー」で構成されている(図2)。ユーザー側は「Flash Player」をインストールしたWebブラウザーを使う。ニコニコ動画は、Flash による動画データ(Flash Video)を共有するためのものだからだ。
Webブラウザーはニコニコ動画のWebサーバーにアクセスすることで、ニコニコ動画のWebページと動画データを再生するFlashアプリケーションである「プレーヤーソフト」をダウンロードする。このプレーヤーソフトは事前にWebブラウザーにインストールしたFlash Playerとは別物で、Webサイトに組み込まれている。Flash Playerはあくまでも基盤ソフトであり、その上で動作するアプリケーションがプレーヤーソフトだ。
次にユーザーは、自分が視聴したい動画をWebページ上で指定する(図2の1)。指定した動画にはIDが振られており、そのIDがWebサーバーに送られ、データベースに到着する。データベースはIDに対応する動画とコメントが置かれているサーバーのURLをWebブラウザーに返す(図2の2)。プレーヤーソフトはそのURLを基に、動画サーバーとコメントサーバーにアクセスし(図2の3)、それぞれのサーバーは動画とコメントのデータを返す(図2の4)。動画とコメントのデータを受信したプレーヤーソフトは、その二つを同期して表示させる(図2の5)。
初めからコメントの入った動画をサーバーが配信しているかのように見えるが、実際はこのように別々のサーバーに保存しているデータをプレーヤーソフト上で重ね合わせて表示しているのである。