タブレット端末「iPad」の世界発売を目前にして、米Appleの発行済株式数に基づいた時価総額が米Microsoftを抜いたというニュースが世界中を駆け巡った。2010年5月26日のAppleの株価は終値ベースで前日比0.4%安の244.11ドル、一方Microsoftの株価は同4%安と大きく下落し、25.01ドルとなった。

 この日の終値ベースのAppleの時価総額は約2221億ドルとなり、Microsoftの約2192億ドルを上回った。AppleはExxon Mobilに次ぐ全米第2位、IT業界でトップの座についた。米New York Timesの記事はこれを、「一つの時代の終わりと新たな時代の幕開け」と表現し、今のAppleの及ぼす影響の大きさを伝えた。

 そのAppleを支えているのはiPhoneである。同社は2010年の1~3月期に、約880万台のiPhoneを売り上げた。過去1年間で見ると約3000万台になる。今やiPhoneの売り上げは同社全売上高の4割を占めている。また4月3日に米国で販売開始したiPadは2カ月で200万台超を売り上げた。この5月28日には世界9カ国でも販売が始まっており、その数字が反映される今期(4~6月期)の決算に投資家が期待を寄せている。

 iPhone、そしてiPadと、急成長するモバイル端末市場を謳歌するAppleだが、そうした中、ライバル企業は危機感を募らせており、次々と新戦略を打ち出している。

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Microsoftのモバイルのシェア転落、組織再編でテコ入れへ

 Microsoftは5月25日、スマートフォン向けOS「Windows Phone 7」などのモバイル事業について、Steve Ballmer最高経営責任者(CEO)の直轄とする組織再編計画を発表した。併せて同社で携帯電話やゲーム事業を率いてきたRobbie Bach氏の退任も発表。不振な消費者部門をテコ入れし巻き返しを図る。これを受け、米Wall Street Journalなどの各メディアが「携帯電話や、iPadなどの新たなデバイスの台頭は、Microsoftのパソコン向けソフトウエア事業も脅かしている」などと報じ、不安を投げかけた。

 米Gartnerの調査によると、2010年第1四半期のスマートフォンOS市場では、MicrosoftのWindows Mobileのシェアが6.8%となり、米Google主導のAndroid(9.6%)に抜かれ5位に転落した。トップはフィンランドNokiaのSymbianで44.3%、2位は北米などでビジネスパーソンに人気があるカナダRIM(Research In Motion)のBlackBerryで19.4%。AppleのiPhone OSは15.4%で3位となった。この中で、iPhoneとAndroidが急速にシェアを伸ばしている。

携帯世界最大手も危機感募らす

 安閑としていられないのがスマートフォンの技術を巡ってAppleと特許係争を繰り広げているNokiaだ。同社は携帯電話機世界最大手。しかし2010年第1四半期における同社出荷総数は前期に比べ15.1%も減少している。

 とりわけスマートフォンなど高機能端末の分野で危機感を抱いており、この7月に大規模な組織再編を実施する。新たにスマートフォン部門を設置、米Intelと開発を進めるモバイルOS「MeeGo」やSymbian端末と、モバイル向けネットサービスの事業を統合する。消費者にアピールできる高付加価値製品を迅速に開発する体制を作るという。

 また同社は米Yahoo!とネットサービスで世界規模の戦略的提携を結んだ。2007年に81億ドルで買収したNAVTEQの地図/ナビゲーションサービスは、米Googleのサービスよりも知名度が低く、投資効果が十分に得られていないと指摘されている。同社はこのサービスをYahoo!を通じて提供することで、モバイルネットサービス「Ovi」の知名度向上も図る。Yahoo!のブランド力を利用して北米市場で販売攻勢をかけたい考えだ。

 一方のYahoo!は、Nokiaの携帯電話に電子メールとインスタントメッセージングのサービスを提供する。中国やインドなど新興国で利用者が多いNokiaのユーザーにYahoo!のブランドを認知させ、次世代インターネットユーザーの早期囲い込みを狙っている。

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