ビットワレットは、電子マネー「Edy」の企画・運営会社。利用店舗の開拓、ブランド管理など一手に手掛けている。CIO(最高情報責任者)の大橋春彦さんは、ソニー本社でソニースタイルやソニー銀行などのネットビジネス、コクーンなどのネットワーク対応製品のネットにおける共通の仕組み作りや顧客情報管理、機器認証などを担当。ソニーがハードウエアからネットワークへ転換する時代の中心にいた。Edyはネットワークを有効活用することで顧客に提供するサービス。ビットワレットに移ってからの大橋さんの役目は、CIO兼CTO(最高技術責任者)といったところだ。

 大橋さんは、B2C企業であるべき会社の実態が、意外にB2Bの決済企業だったことに驚いた。以来、ソニーのネットワーク事業の経験を生かし、顧客の気持ちになってサービスからシステムまで改善を重ねてきた。特にこの1年は大幅なコスト削減にも取り組み、Edyシステム全体のランニングコストを3分の2に。(1)無駄を省く(2)ビジネス定義の再設計(3)リスクを取ることで勝ち得た。

ソニーで培ったノウハウが成長を後押しする

 無駄はどの会社にもある。これは社員や業務委託、業務内容を徹底的に可視化することで削るだけ削った。Edyは電子マネーの草分け的存在だから、ビットワレットは市場を創ることも使命の会社。そこではロールモデルもなく、試行錯誤の連続だ。市場規模やスピード、消費者嗜好を定義し直すことでコストを削減した。大橋さんはシステムの人間だけがリスクを負うのはおかしいという。確かに障害対策を2重にする会社はあっても3重の会社は少ない。作業ミスだけでなく仕様ミスだってある。経営リスクを取りながらリスクを最小限にすることをCIOらしく経営者と握った。

 Edyは、ほかの電子マネーがお店や地域で限定されているのに比べ、コンビニエンスストアやスーパー、自動販売機など幅広い店舗で導入されている。パソコン、携帯電話、テレビとマルチデバイスでも利用可能。より広い顧客層・地域で利用できる電子マネーは、マーケティングツールとしての潜在能力が大きい。市場が広がれば広がるほどソニーで培ったB2Cのノウハウは必ずビットワレットの成長を後押しするはずだ。

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
 シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA