ニフティクラウドを検証する本特集の第3回では、前回の仮想CPUに続いて仮想LANとWANの実効速度を検証。WANの通信速度はTCP/IPの1セッションで70Mビット/秒に迫り、国内にデータセンターを置くパブリッククラウドの強みを見せた。
ニフティクラウドは、@niftyサービスを支えるネットワークインフラを生かしたパブリッククラウドだ。しかしその広帯域をうたうわけでもなく、データセンターとインターネットの帯域や共有ユーザー数の上限といった目安も明らかにしていない。
そこで仮想LANとWANを対象に、TCP/IPのスループットを測定した。仮想LANは、最上位スペックの仮想マシンであるlarge16に対して10種類の仮想マシンからトラフィックを送信する際のスループットを測定。WANについては、ニフティクラウドの10種類の仮想マシンとWindows XPの物理クライアントとの間で通信速度を測定した。利用したベンチマークソフトはTCP/IPスループットの測定ツール「iperf」である。
変動幅が大きい仮想LANの速度
仮想LANの検証結果は、miniが600Mビット/秒前後、small群が900Mビット/秒前後、medium以上は5Gビット/秒前後で、large16のみ約940Mビット/秒となった(図1)。
一見、仮想マシンのスペックでスループットが決まっているかのように見えるが、そうではない。仮想CPUの数が2のmediumと4のlargeで同程度の値が得られたり、最上位のlarge16がsmallと同程度の値に落ち着いていたりと、仮想CPUコア数や仮想メモリー容量などのスペックとの相関は見られない。スループットを左右するパケット往復時間(RTT)は0.3ミリ秒前後で安定しており、結果に大きな影響は与えていないようだ。
日を置いて追試を繰り返すと、測定日によって値が数百Mビット/秒から数Gビット/秒の間で変動した。例えばminiでは、2Gビット/秒前後の測定値が出るときもあれば、また数百Mビット/秒前後に落ちる日もあった。
ニフティクラウドの設計思想は、リソース制御に労力を費やすのではなく、本業のサービスプロバイダ業への投資と二人三脚で規模の経済性を追求するというものだ(関連記事)。いずれの仮想マシンも仮想NIC(VMwareのvmxnetドライバ)自体のリンク速度は10Gビット/秒で、リソース制限はかかっていない(リスト1)。仮想NICから先のボトルネックでスループットが決まる設計である。
[root@localhost ~]# dmesg | grep NIC
VMware vmxnet virtual NIC driver
VMware vmxnet3 virtual NIC driver - version 1.0.1.0-NAPI
eth0: NIC Link is Up 10000 Mbps
eth1: NIC Link is Up 10000 Mbps
WAN速度はAmazon EC2の3倍
時間単位の従量課金が売りのニフティクラウドは、Amazon EC2と比較される存在。その際に絶対的な優位性として挙げられるのが、データセンターが国内にあるという点だ。TCPのスループットは、パケットをやり取りする距離が短いほど高くなる。
そこで仮想LANに続いて、検証用クライアントからニフティクラウドに対する実効速度を計った。RTTは約5ミリ秒。上り/下りの双方をiperfで測定した(図2)。
検証用クライアントからニフティクラウドへのアクセスは、総じて上りで約70Mビット/秒、下りで約60Mビット/秒の実効速度が得られた。miniのみ値が低いのは、約4Mビット/秒から約70Mビット/秒と値が安定しなかったからだ。miniのみ仮想CPUのリソース制御を施しているため、WAN速度についても制限をかけているのかもしれない。
サービス内容の面で競合するEC2と比べると、最も日本に近いシンガポールのデータセンターに対する国内からのスループット測定で20Mビット/秒の値を得るのがやっとだった(関連記事)。Webアプリケーションなどの応答性能も考慮すると、サービスとしての魅力の差はさらに広がるだろう。
次回はCPU、ネットワークと並んでシステム性能を大きく左右する仮想ストレージに焦点を当てる。標準の仮想ディスク、および2種類の拡張仮想ディスクの処理性能を仮想クライアントによる負荷テストで検証する。