ニフティクラウドは、ニフティのサービスプロバイダ事業の仮想化インフラを基盤とするサービス。社内サービス基盤の貸し出しが本業の成長に寄与するという構図が、機能や実効性能の大枠を決めている。ニフティ IT統括本部基盤システム部の上野貴也課長に、設計思想と今後のロードマップを聞いた。

(聞き手は,高橋 秀和=ITpro


ニフティ IT統括本部基盤システム部の上野貴也課長
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ニフティクラウドの強みは。

 オンデマンド性とスケーラビリティだ。

 オンデマンド性は、ニフティの@nifty事業がし烈な競争に勝ち抜くために、社内の利用部門が迅速に使える環境を整える中で作り上げてきた。2007年からサーバー仮想化を進め、柔軟にリソースを配分できる運用管理ツールを開発してきている。現在はVMware vSphereの機能を使っている部分もあるが、仮想マシンの生成や監視、ディスク管理などは独自で自動化を進めてきた経験がある。ニフティクラウドではサーバーの起動時間として「5分」という言葉を前面に押し出している。今後もこの数字にはこだわっていく。

 スケーラビリティの確保については、サーバー台数があるしきい値を超え、本当の大規模システムになった際に何が起こるかを知っているのが強みだ。1000台以下と数千台規模では、構築・運用における“世界”が違う。そのインフラで数千の仮想マシンを運用している実績を持つ。このインフラとノウハウの蓄積が、ニフティクラウドのスケーラビリティの源泉となる。

仮想CPUは動作周波数とコア数が性能の目安になる。ネットワークやストレージの性能指標はあるのか。

 まずCPUの動作周波数を数字としてユーザーに提示しているのは、物理CPUコアと仮想CPUコアの比を1対1にしているからだ。動作周波数の制限はかけていない。性能が出てこそ使いやすいサービスになるという判断だ。試用版として位置付けている「mini」スペックの仮想マシンのみ、動作周波数換算で1GHz相当のリソース制限をかけている。

 ネットワークについては、帯域や共有するユーザー数などの目安は提示していない。ニフティクラウドのネットワークはニフティが提供するサービス群と共用しているため、指標となる数字を出すのが難しいからだ。とは言え、@niftyはネットワークが事業の生命線だ。@niftyおよびニフティクラウドのユーザーにレスポンス面で不便をかけないよう、トラフィックの流量に応じて回線を増強している。満足なレスポンスが期待できなくても仕方がないというのが“ベストエフォート”型サービスだとすると、ニフティクラウドをそう呼ぶのは語弊があると考えている。

 ストレージも具体的な指標を明らかにしていないが、仮想マシン内の標準ストレージ、常時利用向けの拡張仮想ディスク「Disk100」、アーカイブ向けの「Disk40」と用途別に性能を変えている。いずれもネットワークストレージで、物理サーバーは原則ディスクレスだ。ハードウエアとしては、ストレージ装置を増設した際に自動的に容量や負荷が調節されるスケールアウト型のネットワークストレージを使用している。

Amazon EC2と比べると、APIが公開されておらず、仮想マシンイメージのコピーやインポート機能にも欠けている。

 APIは2010年6月中をめどに提供を始めたい。できるだけ早期にAPIを公開し、エコシステムの醸成を促していく。

 VMware仮想マシンのイメージファイルをそのまま使えるようになれば、ユーザーにとって分かりやすい差異化のポイントになる。ただニフティクラウドがVMwareベースとはいえ、ユーザーの仮想マシンイメージの設定と、ニフティクラウドにインポートする際の設定を、動作に問題がないようにすり合わせる仕組みが必要になる。具体的な提供時期や機能の詳細については未定だ。

 このほかにも検討中のサービス強化として、カード決済による個人ユーザー向けサービスの提供や選択できるOSの強化、バッチ処理のスケジューラ機能などがある。まずはAPI提供に向けた開発を最優先で進めている段階だ。