図1●録画実験を行っている様子
図1●録画実験を行っている様子
HDD録画中に異なる局を選択しようとすると警告表示も出る。ディスプレイとしてサムソンのパソコン用モニタとSTBをHDMIケーブルで接続した。
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 NTTぷららが提供する「ひかりTV」を受信するためのセットトップ・ボックス(STB、NTT東日本の「Picture Mate 700」)を、筆者宅(東京都中野区:戸建て住宅)で実験してから一年が過ぎた。今回、区内での引っ越しを期に回線をフレッツ光ネクストにアップグレードしたため、再度同じSTBを借り受けてサービスの検証を試みた(図1)。

 今回、フレッツ光用ルーターは用いず、光回線終端装置(ONU)に直結して実際にサービスを利用した。

ONUと直結してもサービスは受けられる

図2●ONUとSTBをLANケーブルで直結
図2●ONUとSTBをLANケーブルで直結
IPv6の各パラメーターはSTBのみで取得できることがわかった。
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 ひかりTVは2009年度末時点で加入者数が100万を超えた。2010年4月23日に行われたNTTぷららの事業説明会で代表取締役社長の板東浩二氏は、「100万の大台を超えたことで、伝送コストやコンテンツ調達費といった事業の原価部分を回収できるメドがたった」とコメントしている。ひかりTVは現在、わが国で唯一、地上デジタル放送をIP再送信しているプラットフォームだが、IPv6を用いてサービスが受けられる仕様となっている。さらに、地デジの再送信を受けるためにはフレッツ光ネクストに加入する必要がある。

 当然のことだが、筆者が手持ちのフレッツ光対応ルーター(WebCaster 700、2003年製)とONUを接続した上で本機を接続したが、メニュー画面が出てこなかった。そこでルーター機能のないONUとSTBを直結してみると、IPv6上のアドレスが割り当てられひかりTVサービスが受けられた(図2)。筆者は仕事上、メタル回線も使用するのでNTT東日本がサービスする「ひかり電話」は使用していない。

地上デジタル放送をスキャニングする

 今回、ひかりTVのデジタルエアチェックのために、バッファローのUSB外付けハードディスク装置(HDD、容量が1Tバイトのタイプ)を借り受けて実験に望んだ。

 まず、本機をセットアップした後に約1時間ほど(NTT東日本のフレッツ光ネクストの場合)待機する。これは、NTTのアクセス網にSTBのパラメーターが認知され、IP化された各デジタルテレビ番組などが送受信できるように設定するのにかかる時間だと思われる。

 その後、設定メニューから地上デジタル放送の項目で、そのIP再送信局データをスキャニングする。筆者は実験の一環として、郵便番号と地区を京都に設定してからスキャンしたてみた。結果は、見事に割り当てられたのは東京で受信できるテレビ局であった点も付け加えておく。

 また、キー局の他に割り当てられたのは東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)と放送大学である。ちなみに、筆者宅ではテレビ神奈川(tvk)とテレビ埼玉もデジタルで直接受信可能だが、ひかりTVのサービスは区域内再送信の運用規定を遵守して運用しており、受信できない。

地上テレビ番組も専門番組もハイビジョン映像で手軽にエアチェック

図3●3Dコンテンツのデモ画面と鑑賞用3Dめがね
図3●3Dコンテンツのデモ画面と鑑賞用3Dめがね
2010年4月23日にNTTぷらら本社で行われた説明会中、別室で披露されたデモの様子。ディスプレイは発売されたばかりのパナソニックの3D対応テレビである。
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 今回の実験では地上デジタル放送番組も、ハイビジョンの専門番組も番組表から予約して気軽にエアチェックできるのは便利と感じた。IPTVの普及においては、番組予約が必須のサービスであろうと筆者は感じていたので、手軽に番組予約をしてHDDに録画できるようになったことは画期的である。予約済みの各番組をHDDから呼びだすことも、リモコンで一覧から選択するだけである(なお、視聴中の番組を同時録画する場合は、手動で現在の時刻情報を入れて予約するという手間がかかった)。

 エアチェックした番組の画質については、伝送されてきたものをそのまま録画・再生するわけだから、IP再送信のリアルタイム再生した映像と違いは基本的にない。HDDの小型化も進んでいるので置き場所に困るということも少なくなってきている。IPTVが一般のテレビ放送と変わらないサービスを可能とする時代の扉が開くものを感じさせるところだ。

 現在、ひかりTVの基本パックには、CSの衛星放送やケーブルテレビでは馴染みの一部人気チャンネルが欠けている。しかし、独自に調達したパリーグの試合をプロモチャンネルで配信したり、VODサービスの見放題のタイトルが追加され入れ替わったりするなど、コンテンツの充実化が計られてきている。加入者数が100万を超えた結果、番組供給のルートとしても非常に存在感を増しており、その動向は、各番組供給事業者にとって無視できない状況になっており、ケーブルテレビ事業者にとっては手ごわい競争相手に育ってきた。

 ひかりTVは、3D放送、スタートオーバー機能の提供、リモコン操作によるショッピング機能など様々な取り組みを推し進めることを計画しており、今後のひかりTVの事業展開に興味がつきないというところだ(図3)。

佐藤 和俊(さとう かずとし)
放送アナリスト
茨城大学人文学部卒。シンクタンクや衛星放送会社,大手玩具メーカーを経て,放送アナリストとして独立。現在,投資銀行のアドバイザーや放送・通信事業者のコンサルティングを手がける。各種機材の使用体験レポートや評論執筆も多い。
■変更履歴
当初、この検証で利用した外付けハードディスク装置(HDD)の容量を1Gバイトとしていましたが,1Tバイトの誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2010/07/14 23:00]