Android普及促進団体 日本Androidの会の「デベロッパー倶楽部」(通称「デ部」)は2010年5月15日、都内で第4回目となるミーティングを開催した。「デ部」は、本気でAndroidアプリケーションを開発したい開発者が集まる場である(関連記事)。複数のチームに分かれ、Androidを活用したユニークなアプリケーションの開発を進めている。ミーティングは各チームの報告を中心として進み、参加者によるライトニングトークス(LT)も行われた。

「音」でデータ通信を行うアイデアを披露

 興味深かったのは、「サウンド(音)」チームが披露したアイデアの数々である。同チームは、前回のミーティングでは各メンバーが楽器アプリを持ち寄り合奏するデモンストレーションを見せた(関連記事)。現在は「第2回演奏会へ向け開発中」とのことだ。

 今回披露したアイデアは、「音」でデータ通信を行うというものであった。きっかけは「イヤホンジャックをデータ転送に使う」というアイデアである。例えば、iPhoneでクレジットカード決済を可能とするサービスSquareでは、クレジットカードを読み取る装置とiPhoneとのデータ転送のため、イヤホンジャックを利用している。

 ここで考えてみると、スマートフォンは、音を鳴らすことも、音を受信することもできる。「音を使って端末間でデータのやりとり(アドレスの交換とかメッセージのやりとりとか)ができたら面白い」。そこで様々な検討を行った。例えば、電波が届かない環境でも音で情報伝達をすることもできる。条件が整えば1対多のブロードキャスト通信も可能となる。それに「かっこいい」。

写真1●「音」を使うデータ転送アイデアのきっかけとなったツイート

 この目的のため、例えばモールス信号のような符号化を利用する方法が考えられる。復号のためのアルゴリズムとして、FFT(高速フーリエ変換)や、より計算量が少ないGoertzelアルゴリズムが考えられる。音を使うことのデメリットとして、騒音源になること、通信速度が遅いこと、などが考えられるが、これらが気にならないような利用方法を選べばよい。音楽にデータを載せるアイデアも考えられる。事例として、三井ベンチャーズ が主催する「i*deal Competition」で2008年の大賞に選ばれた「サウンドコード」が音声にデータを重畳するアイデアを実現している(関連記事)。

写真2●「音」を使った情報伝達のアイデアを検討

 さらに「人間が聞き取れない周波数帯域の音を使う」アイデアや、「音ではなく振動でデータを送受信する」アイデアも考えられる。後者は、バイブレータで送信し、加速度センサーで受信する。このように、チームは「音」を軸として多様なアイデアを出し、何か「動くもの」を作る方向で検討を進めている。

写真3●端末同士を接触させて振動で情報を伝達するアイデア