企業ユーザーにとって,クラウドの使い方としてはハイブリッド型が最も現実的だ。ハイブリッド・クラウドを見据えたサービスや技術は次々に登場しており,今後1~2年のうちにハイブリッド型の採用が本格化すると見られる。
例えばマイクロソフトが2010年2月に正式にサービスを開始したWindows Azure Platformでは,企業システムとして利用されることが多いWindows ServerやSQL Serverと同等の機能がクラウド上に用意されている。このため企業システムのリソースとクラウド上のリソースをシームレスに使える(図1)。
ローカルのWindows Server上からアプリケーションをクラウド上に移行したり,ローカルとクラウドのデータベースを連携動作させて,リソースを最適化することもできる。将来的には企業内のシステムとクラウド上のシステムを一体としてデザインできる「Virtual Network Overlay」と呼ぶ機能も提供予定だ。
Salesforce.comなどのSaaSとデータ連携できる製品も次々に登場してきた。インフォテリアやアプレッソといったソフトウエア・ベンダーが提供中だ。それぞれのSaaSにデータ連携用のアダプタを設けることで,企業のシステムと相互接続できる。
国内の主要ベンダーもハイブリッド・クラウドの進展を見据えた取り組みを強化している。例えば日立システムアンドサービスは,クラウドと企業システムを統合連携させるソリューションをメニュー化し,3月に提供し始めた。
富士通研究所も,企業内のシステムとクラウドのシステムをアプリケーション・レイヤーで連携させられるサービスを準備中だ。「SOAに基づいて両者をつなぐ形を検討している」(富士通研究所の岸本光弘クラウドコンピューティング研究センター長代理)。現時点で詳細は明らかにしていないが,重要データやシステムを社内リソースとして残しつつも,クラウドのパフォーマンスや柔軟性を生かし,しかも別々のリソースを使っていることを利用者に意識させないサービスを実現できるという。
IaaSを使ってシステム連携させる方法もある。IaaSなら純粋にサーバー・ハードウエアとして使えるため,その上でデータベース連携などの仕組みを作ればよい。