製品やサービスを説明するためのパンフレットや資料。これらが、オフィスの一角に積まれている企業は少なくないだろう。そのパンフレット類を一掃し、印刷コストや管理コストを削減するサービスが登場している。無駄な印刷を減らせることから、環境配慮の観点で導入する企業も急増している。

写真1●オンデマンド印刷のために分速110枚を印刷できる機械
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図1●オンデマンド印刷を注文するための専用Webサイトの画面
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 そのサービスを提供するは、ヤマト運輸のシステム関連会社、ヤマトシステム開発(YSD)。東京都内に持つ「YSD東京オンデマンドセンター」の一室には、巨大な印刷機が鎮座している(写真1)。富士ゼロックス製の「Xerox iGen4 Press」だ。その高さは約2.5メートル、付属ユニットを合わせた全長は10メートル近くにもなる。

 この機械で、企業が製品/サービスを顧客に説明するために使うパンフレットや資料などを印刷する。印刷能力は1分間に110枚。カラー印刷や差し込み印刷も可能で、測色機と呼ばれる仕組みで、印刷物の色を数値化し、設定通りに正しい色で印刷できているかどうかをチェックしながら印刷する。センター内で、紙を二つ折りにする「中とじ製本」や、紙の背の部分にのりを付ける「くるみ製本」までが可能だ。

 手持ちのパンフレットや資料が不足してきた企業は、専用のWebサイトから、必要な部数の印刷を注文する(図1)。刷り上がった資料は、それらが必要な場所まで、翌日にはヤマトの本業である宅急便で届ける。利用企業は資料を大量にストックしておく必要がなくなる。印刷は1部から注文できる。

最新の情報でパンフレットを作成

 「販促品オンデマンドサービス」と呼ぶ、このサービスでは、月間30万枚をオンデマンドで印刷している。提供開始からの1年で、約30社が導入した。利用企業の半分が製薬会社で、ほかに保険会社やメーカーなどが利用する。ヤマトシステム開発は、これらを含めた印刷設備に1億円以上を投じたという。この5月には大阪にも同様のセンターを開設する計画だ。

 製薬会社の利用が多いのは、資料などに掲載する情報の変更頻度が高いため。一般に、企業では、営業担当者が顧客を訪問したり説明会を開いたりする際に、パンフレットや資料が不足する事態を避けるため、大量のパンフレットや資料を営業所などに保管している。しかし新商品が登場するなどすれば、旧製品のパンフレットは不要になり、大量に廃棄することにもなる。

 これらの資料をオンデマンドで印刷すれば、オフィスの片隅に積まれているパンフレットや資料を保管する必要がなくなり、大量印刷のコストや管理コストを削減できる。無駄なパンフレットや資料の印刷を減らせることから、環境配慮の支店から導入する企業も急増しているという。ある製薬会社は、2500種類もの印刷物について、ヤマトシステム開発のサービスを利用しているという。