プライベートクラウドを構築するという視点から、ストレージ技術の基本を説明します。ストレージは大きく分けて、「サーバーに組み込まれたディスク(内部ディスク型)」「ブロックアクセスのディスク共有型」「ファイルベースのファイルサーバー型」の3タイプがあります(図1)。

図1●ストレージの3タイプ
図1●ストレージの3タイプ
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 サーバーに組み込まれたディスク(内蔵ディスク型)は、一般的にはオペレーティングシステムのイメージなどのシステム領域に割り当てられます。ストレージ容量の制限がありますので拡張性は低く、大規模なプライベート・クラウド環境では用いられません。ネットワークを介して単体の仮想サーバーを提供する一般的なパブリックサービスでは、コストの観点からこのタイプのストレージを利用することがあります。

 複数サーバーでディスクを共有する方式には、SAN(Storage Area Network)とNAS(Network Attached Storage)があります。この2つの方式の大きな違いは、SANがディスクのブロックへのアクセスを提供するのに対し、NASはファイル本体へのアクセスを提供することです。NASはファイルサーバーとして利用可能システムを内蔵しており、ファイルサーバーとして利用可能です。

SAN

 仮想サーバーが稼働している物理的なサーバーを移動したり、サーバーのクラスタリング技術を用いてバックアップサーバーを用意したりする要件で、ディスクの共有が求められます。アプリケーションがアクセスするディスクを共有することで、同じデータを異なるサーバーで利用するためです。こうした場合にはSANが用いられます。

 SANの場合、直接ブロックデバイスとしてディスクにアクセスするため、ネットワークのブロッキングによる遅延などを厳密に制御する必要があります。SANを構成するには方式には、「ファイバーチャネル方式」「iSCSI IP-SAN方式」「FC over Ethernet方式」の3つの方式があります(図2)。

図2●SANを構成する3つの方式
図2●SANを構成する3つの方式

 ファイバーチャネル方式はSAN専用のネットワークを構築できるため、遅延などの制御が最も容易な方式です。しかし、ネットワークアダプターとは別に専用のサーバーアダプターが必要になるため、多数のサーバーを集約するクラウドコンピューティング環境ではコスト負担が重くなりがちです。

 それに対してIP-SAN方式やFCoE方式は、一般のイーサネットアダプターを共用することが可能で、サーバーの外部アダプターを一本化してコストパフォーマンスを高めることができます。外部アダプターには10Gビット/秒のイーサネットのほか、「Infiniband」技術を使うことができます。